辻堂 魁

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文庫

祥伝社

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本シリーズでは「渡り用人」というはじめて聞いた職業が登場します。「用人」とは、身分等により職務の内容も異なるようですが、旗本等では「金銭の出納や雑事などの家政をつかさどった者」を言い、また「渡り」とは、「渡り中間」などで使われているように、期間を区切って雇われる者を意味しているようです。

通常は家臣として用人がいる筈ですが、武士の世界もひっ迫していて用人を置く余裕もないのでしょう。そこで、業務の経費削減のために外部委託が行われることになったのでしょうか。


その前に、そもそもこうした職業が実在したのか簡単に調べたのですが分かりませんでした。ただ、藤原緋沙子の作品に『渡り用人片桐弦一郎控』というシリーズがあり、他に岡本綺堂の『半七捕物帳』にも出てきたりするところを見ると、本当にあった職業なのかもしれません。『半七捕物帳 01 お文の魂』は Amazon の Kindle 版から無料版もあるようです。

加えて主人公は剣の使い手でもあり、幕府内のそれなりの力のある後ろ盾がいたり、仲間とも呼べそうな同心がいたりと、痛快時代劇の要素を十分に備えています。

勿論、そうしたエンターテインメントの要素を生かしきるだけの筆力も感じられます。テンポよく読んでいくことができるのです。

ともあれ、唐木市兵衛という「渡り用人」が武家やお店などの様々な依頼に応じてその職務をこなしながら、依頼にまつわる事件を解決していくという物語です。

まあ、渡り用人とは言っても、結局はスーパーヒーローの活躍する痛快活劇時代小説であることには違いは無いのですが、その面白さは近頃のベストではないでしょうか。 野口卓の『軍鶏侍シリーズ』に並ぶほどの面白い小説だと思っています。

十分に期待に添えるシリーズと言えると思います。

[投稿日]2015年04月14日  [最終更新日]2017年9月11日
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