鈴木 英治 雑感
「面白い小説」の条件のひとつに主人公のキャラクター造形があると思うのですが、この人はこれがうまい。
鈴木英治初期の作品である「義元謀殺」を読んだときは少々読みにくい作家だと思っていました。何故かと考えましたが、解説を読んで納得しました。登場人物に平等に光が当てられており、メリハリがつけにくかったようなのです。
しかし、今は文章にリズムがありとても楽に読み進めることができます。
鈴木英治の文章の特徴は、その独白に近い地の文にある思うのですが、その独特の地の文とせりふ回しが小気味よく、調子がいいのです。とにかく軽くてなお且つ面白い読み物を求めている人には丁度いい作品だと思います。
ただ、この特徴である独白の使い方が目障りな人には初期作品を除けば皆同じ作風なので当然ながら向きませんね。
また、最近の時代小説ブームの中での文庫本での書き下ろし小説は、大半がシリーズを通して大きな謎または事件があり、並行して一冊ごとに読み切りとしても読める構成になっています。しかし、この鈴木英治作品は殆どのシリーズが一冊完結ではなくそのまま次の巻に話が続きます。その点が今のテンポの速い構成に慣れた人にはもどかしいかもしれません。
その点さえ気にしなければ面白く読めると思います。
[投稿日] 2015年04月13日 [最終更新日] 2015年5月9日