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野口 卓 雑感

1944(昭和19)年、徳島市生まれ。立命館大学文学部地理学科中退。さまざまな職業をへて、ラジオドラマ脚本・戯曲を執筆。1993(平成5)年一人芝居「風の民」で菊池寛ドラマ賞受賞。2011(平成23)年『軍鶏侍』で時代小説デビュー、文体の軽やかさと渋さが高く評価され、一気に多くの読者をつかむ。同作で歴史時代作家クラブ新人賞受賞。『軍鶏侍』シリーズ、『手蹟指南所「薫風堂」』シリーズ、『ご隠居さん』シリーズ、『北町奉行所朽木組』シリーズなど人気文庫書き下ろし時代小説多数。( 野口卓 | 著者プロフィール | 新潮社 : 参照 )

 

ネット上で見つけた『軍鶏侍』という小説が望外の面白さでした。藤沢周平を思わせるというのです。確かに舞台設定として海坂藩に似た園部藩という架空の藩をもけていたり、情景描写が丁寧であったりと似てはいます。しかし、新人作家であるにもかかわらず、文章も含めて作品自体は野口卓という作家の個性が確立されている印象を持ちました。

経歴を見ると、それまでにラジオ・ドラマ脚本・戯曲を執筆され、菊池寛ドラマ賞を受賞されていて、加えて『あらすじで読む古典落語の名作』や『シェイクスピアの魔力』などの著作を著わしておられる人だったのです。新人離れした筆力という印象も当然のことでした。

 

 

2016年2月時点では『軍鶏侍』シリーズに加え、『北町奉行所朽木組』シリーズ、『ご隠居さん』シリーズと、捕物帳、人情物という個性豊かな作品を出版されています。

勿論、すぐにとりこになった私は、すぐに大半の作品を読んだのですが、しばらく間が空いたところ、『手蹟指南所「薫風堂」』シリーズや『よろず相談屋繁盛記』シリーズなどが出版されていました。

どの作品も時代の情報や「軍鶏」「落語」などの専門的な情報も取り入れ、トリビア的知識をももたらしてくれたりと、さまざまな楽しみ方のできるエンターテインメント小説として仕上がっています。

[投稿日] 2016年02月05日  [最終更新日] 2018年10月28日
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おすすめの小説

おすすめの人情小説作家

他にも多数の作家がおられますが代表的なものだけ取り上げました。
藤沢 周平
人情小説は勿論、大きく時代小説の大御所です。この人の情景描写は他の人の追随を許しません。また、架空の海坂藩の物語は圧巻です。
山本 周五郎
時代小説と言えば、市井もの、武家ものを問わずこの人を外すわけにはいきません。ごく初期の作品を除き、その語り口には常に引き込まれます。特定の一冊と挙げることも難しいほどに、素晴らし作品がそろっています。
今井 絵美子
全体として派手さはありませんが、四季の移ろいの描写も美しく、特に「鷺の墓」から始まる傑作時代小説シリーズは爽やかな感動をもたらしてくれます。
宇江佐 真理
女性らしいの優しい視点で描き出される市井の人々の暮らしに、ときには笑い、ときには涙を誘われながら是非一読してもらいたい作家です。一番の代表作としては個人的に「髪結い伊三次捕物余話シリーズ」がお勧めです。
佐伯 泰英
人情ものというよりは、痛快時代小説というべきでしょう。でも、代表作と言えるであろう「居眠り磐音江戸双紙シリーズ」は軽く読める作品として紹介に値すると思います。

関連リンク

「軍鶏侍」から「ご隠居さん」へ |解説 柳家 小満ん|落語家
野口卓さんは、あたしの隔月の独演会に毎回おいで下さって、いつも優しい笑顔でお帰り戴いている。その野口さんの新作『ご隠居さん』の解説文とのお話で、今度はあたしの方から嬉しい顔をお返しする番だ。
独り読む書の記: 野口卓『軍鶏侍』(1)
私がいつも訪ねている個人ブログですが、作品への読みこみ方が素晴らしいのです。ただ、ネタバレ気味なのが玉にきずでしょうか。