辻堂 魁

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吟味方与力人情控シリーズ(2019年09月10日現在)

  1. 花の嵐
  1. おくれ髪

 

本シリーズは辻堂魁お得意の痛快人情時代小説です。

 

登場人物
鼓晋作  三十二歳 北町奉行所吟味方与力(助)
鼓晋高江 晋作の妻
鼓晋又右衛門 晋作の父
鼓晋喜多乃 晋作の母
鼓晋苑 晋作の長女 三歳
鼓晋麟太郎 晋作の長男 誕生したばかり
相田翔兵衛 晋作の家人

春原繁太  北町奉行所定町廻り方同心
権野重治  北町奉行所臨時廻り方同心
戸塚宗次郎 晋作の同僚
谷川礼介  隠密廻り方同心 晋作の幼馴染み
桂木(お澤) 梓巫女 谷川の手先の一人

永田備後守正道 北町奉行 文化8年(1811年)に小田切土佐守直年のあとを継いだ
榊原主計守忠之 北町奉行 文政2年(1811年)に永田備後守正道のあとを継いだ
柚木常朝 主任
小木曾勘三郎 徒士目付 二十八歳

 

辻堂魁の他の作品群と同じく、切なさをベースにした物語と言っていいでしょう。

強者により虐げられた弱き者たちが年月を経て復讐を果たしたり(第一巻 花の嵐)、貧乏ゆえに強欲な金貸しに辱めを受けた一家が復讐を果たしたり(第二巻 おくれ髪)するのです。

 

ただ、普通の痛快時代小説と異なるのは、主人公が与力だということです。

ここに「与力」とは、江戸時代以前では「加勢する人」や有力武将(寄親)に対する在地土豪という意味の「寄子」という意味で使われることが多かったそうです。

江戸時代では「諸奉行・大番頭(がしら)・書院番頭などの支配下でこれを補佐する役の者」( コトバンク : 参照 )を意味し、特に時代小説では「町奉行配下の町方与力」を指すことが多く、本書でもこの意味での「与力」が使われています。

ただ、この意味での与力にも「町奉行個人から俸禄を受ける家臣である内与力」と普通の「奉行所に所属する官吏としての通常の与力」とがあり、本書の鼓晋作はこの「官吏としての通常の与力」を意味します( ウィキペディア : 参照 )。

その上での「吟味方与力」とは、「出入筋(公事 = 民事訴訟)・吟味筋(刑事裁判)を問わず、裁判を担当する役務で、容疑者の取り調べも行なう。」そうです( ウィキペディア : 参照 )。

この吟味方与力である主人公鼓晋作が本シリーズでは特別に配された配下の者を動かし、事件解決に邁進します。

 

同心」という言葉も本来は「江戸幕府の下級役人のひとつ」ですが、「江戸幕府成立時、徳川家直参の足軽を全て同心とした」ため、「鉄砲組の百人組、郷士の八王子千人同心等、様々な同心職ができ」たそうです( ウィキペディア : 参照 )

「八王子千人同心」などは時代小説にもよく登場するので聞いたことがある方は多いと思います。例えば『風塵 風の市兵衛』は蝦夷地に入植した八王子千人同心の悲劇がテーマになっていました。

 

 

ともあれ、主人公鼓晋作が仲間の力を借りつつ、事件を解決していくという王道の痛快時代小説です。

ただ、もともとは学研M文庫から2008年に出版されていた作品で、殆どデビュー直後に書かれた作品だからでしょうか、今の作風からすると文章もかなり美文調と言っていいのかはわかりませんが、通俗性が高いように感じます。

そうしたことが原因かどうかはわかりませんが、本シリーズは現時点(2019年9月11日)では二冊しか刊行されていません。

それでもなお今に通じるストーリーの面白さは既に読み取れるのであり、その後ベストセラー作家へとなられたのも当然かと思います。

 

なお、本書に登場する北町奉行の小田切土佐守直年や永田備後守正道、それに同心の春原繁太は同じ辻堂魁の人気シリーズ『夜叉萬同心シリーズ』や『日暮し同心始末帖シリーズ』にも登場しています。

夜叉萬同心シリーズ』と『日暮し同心始末帖シリーズ』とは舞台を共通にしていることが明記されていますが、本『吟味方与力人情控シリーズ』は単に実在した奉行名を使用した、また作者が春原繁太という名を気に入ったというににすぎず、独立したシリーズと考えるべきでしょう。

[投稿日]2019年09月11日  [最終更新日]2019年9月12日
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