本書『吉原裏同心シリーズ』は、江戸は新吉原を舞台に、吉原で起きる不始末を表に出さずに処理する裏同心を描く痛快時代小説です。
人妻と手に手を取り故郷を出奔した神守幹次郎が、示現流の遣い手として吉原の危機を防ぐ姿は、痛快時代小説の醍醐味を満喫させてくれるでしょう。
理不尽な結婚に苦しんでいた人妻の汀女を連れて、故郷の豊後岡藩を出奔した幹次郎は、女仇討の追手に追われ、十年の流浪の旅の末、江戸・吉原に流れ着く。
廓を統括する吉原会所の四郎兵衛に剣の腕を見込まれ、幹次郎は廓で起こるトラブルを解決する「吉原裏同心」となる――。( 佐伯泰英 特設ページ | 光文社文庫 | 光文社 : 参照 )
舞台が吉原であるところがまず独特なのですが、痛快時代小説としてのつぼはちゃんと抑えてあります。
また、この主人公自身は薩摩示現流の達人で当然無敵です。更には駆け落ちしてきた美人の妻はいますが、舞台は吉原ですから勿論花魁が出てきてこの主人公にからみます。立ち回りと美女とユーモアと、定番ですが面白いです
当初の『吉原裏同心』シリーズでは、敵役は幕府の中核の大物で、主人公は吉原の用心棒として自分たちの生活、引いては吉原を守るためにこの巨大な敵に立ち向かうことになります。
この流れも、2017年3月からの『吉原裏同心抄』というシリーズになると、幹次郎の私的な生活にも変化があり、吉原に個別に襲い掛かる様々な障害を取り除く作業へと変化しています。
そして、2019年9月になると『新・吉原裏同心抄』シリーズへと変化し、舞台が幹次郎のいる京、そして江戸の吉原と二つに分かれるようです。
2014年6月からNHK総合テレビの木曜時代劇で枠で、小出恵介と貫地谷しほりという役者さんでドラマ化されました。2020年08月現在ではまだDVD化されていません。