佐伯 泰英

吉原裏同心シリーズ

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本書『赤い雨: 新・吉原裏同心抄(二)』は、文庫本で312頁の『新・吉原裏同心抄シリーズ』第二巻の長編痛快時代小説です。

 

『赤い雨: 新・吉原裏同心抄(二)』の簡単なあらすじ 

 

京での修業先が決まった幹次郎と麻。その新生活は不穏な空気に包まれていた。祇園旦那衆らの寄合で、不審な殺人について探るよう依頼された幹次郎は、正体の見えぬ強敵に立ち向かうことに。一方、裏同心不在の吉原では、老舗の大籬がついに謎の山師の魔の手に陥ちてしまう。二つの町で進行する企みと危機の連続。裏同心幹次郎と吉原の人々の新しい闘いが幕を開けた。(「BOOK」データベースより)

 

祇園社境内の一角にある神輿蔵の二階に住むこととなった神守幹次郎の部屋に「京に長居することを許さじ」との文があった。

祇園にある禁裏門外一刀流観音寺道場へと通うことになった幹次郎は、そこに通う京都町奉行所同心の入江忠助に祇園の旦那七人衆のうち二人が殺された事件の調べを頼む。

また、一力の主の次郎右衛門から会うように言われた京都所司代密偵の渋谷甚左衛門は、事件の裏にいる西国大名は旦那七人衆に代わって京の商いの実権を握り、江戸に代わる幕府を考えているのではと言い、先方から幹次郎に仕掛けてくるように手を打ったというのだった。

一方江戸吉原では、佐渡の山師荒海屋金左衛門が買い取ったという大籬「俵屋」の番頭の角蔵と吉原会所会頭の四郎兵衛とが合う前に、角蔵は何者かに殺されてしまい、同心の桑原市松が乗り出すこととなった。

また、四郎兵衛は桑平と共に居場所の分かった俵屋萬右衛門に会いに出かけるが、俵屋は何かを隠したまま何も話そうとはしない。

そこで、四郎兵衛は俵屋の女衆頭のおとみから俵屋の内情を聞き、袋物屋美濃屋の若旦那小太郎の名を聞きだした。

しかし、小太郎というのは偽物で色事師であって、この後は身代わりの佐吉がこの色事師を追うことになった。

 

『赤い雨: 新・吉原裏同心抄(二)』の感想

 

前巻の『まよい道: 新・吉原裏同心抄(一)』から新たに京での暮らしを始めた神守幹次郎と加門麻の二人です。

神守幹次郎は祇園社境内にある神輿蔵の二階に、加門麻は祇園の一力茶屋にと落ち着き先も決まっていて、さらに、幹次郎は朝からの剣の稽古のあと清水寺の羽毛田亮禅老師と読経を共にし、その後産寧坂の茶店で茶を喫する日々が始まっています。

そんな幹次郎は、祇園の旦那衆との結びつきも強くなり、江戸の吉原同様にそれなりの問題を抱えている祇園の力になるべく勤めることになります。

 

一方、江戸では一見の客を取らない独特の商売を行っていた大籬「俵屋」が乗っ取られるという事件がさらなる展開を見せていました。

そこで、幹次郎のいない吉原では女裏同心の澄乃が幹次郎の代わりを勤めていますが、やはり力不足は否めず、吉原会所頭取の四郎兵衛は廓の外での手助けとして同心の桑原市松や身代わりの佐吉らの力を借りることを決めています。

 

このように、前巻の『まよい道: 新・吉原裏同心抄(一)』から新たな展開に入った本吉原裏同心シリーズですが、物語も江戸と京都の二個所で繰り広げられることになります。

特に本巻『赤い雨: 新・吉原裏同心抄(二)』では江戸と京都の描写バランスが殆ど同等であり、見方によっては二つの物語の同時進行が楽しめる、とも言えそうです。

ただ、この点に関しては幹次郎の活躍が見たいという読者にとってはマイナス評価になりかねません。

 

とはいえ、特に京での幹次郎の物語は祇園社や京での天明八年の大火などの説明があったりと、これまでとは異なった今日ならではの説明もあり、物語には新たな視点が加わり面白くなったと思われます。

ただ、まだまだ推測ですが、先行きの物語の展開が国のあり方にもかかわるような大きな事件とのかかわりを持ちそうな気配があり、あまり話を広げない方がいいのではという危惧を持っています。

江戸吉原の存続というこの話の当初の設定が変化することは勿論いいとしても、あまり広がりすぎることはこの物語の焦点がぼけそうな気もするのです。

その点は作者の手腕でどうにでもできる、と言われればそれまでであり、それ以前にこの物語がどのように展開するのか分からない段階でいろいろいうのも違う話でしょう。

 

現時点では江戸にも京にも外部からの乗っ取りに近い脅威が迫っているということであり、それを今日では幹次郎が、幹次郎のいない江戸では吉原会所がどのように回避していくのか、が関心事であることしかわかっていません。

そして、今のところその物語の流れがうまい方向に流れているようであり、面白い物語として展開していると言えそうです。

今後の展開が待たれる本書『赤い雨: 新・吉原裏同心抄(二)』でした。

[投稿日]2021年01月30日  [最終更新日]2021年1月30日
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