口入屋用心棒シリーズ(2022年05月27日現在)
- 逃げ水の坂
- 匂い袋の宵
- 鹿威しの夢
- 夕焼けの甍
- 春風の太刀
- 仇討ちの朝
- 野良犬の夏
- 手向けの花
- 赤富士の空
- 雨上りの宮
- 旅立ちの橋
- 待伏せの渓
- 荒南風の海
- 乳呑児の瞳
- 腕試しの辻
- 裏鬼門の変
- 火走りの城
- 平蜘蛛の剣
- 毒飼いの罠
- 跡継ぎの胤
- 闇隠れの刃
- 包丁人の首
- 身過ぎの錐
- 緋木瓜の仇
鈴木英二という作者の名調子が小気味いい作品です。
おかまチックな同心、奇妙な殺し屋、その殺し屋の想い人としての主人公の妻、更には口入屋の主人や娘たちとの絡み。
他でも書きましたが、この作家もキャラクター設定がうまいのです。登場人物の心理描写としての独白も異論はあるかもしれませんが、このひとの文章のリズムとしてとても心地よいものがあります。
面白いのは、この物語は途中から主人公の湯瀬直之進と、その敵役と言っていいものか殺し屋の倉田佐之助との関係性が変化していきます。
また、南町奉行所定町廻り同心の富士太郎もキャラの変化といってもよさそうな変わり方を見せています。
その意味ではこのシリーズの構成そのものが変わっているとも言えるのですが、これだけ長く続くシリーズではその変化もまた心地よく読むことができました。
この作家の作品では、順番はつけにくいのですが一番だと思います。
これまでは以上のような印象を持ち、この作者を追いかけてきたのですが、このところ鈴木英二という作家の印象が以前ほどではなくなってきています。
この頃では本『口入屋用心棒シリーズ』以外の鈴木英二作品をあまり読んでいないのではっきりとは言えません。
しかし、どうにも冗長な場面が多くなってきた印象です。物語の筋とは無関係な、物語のリズムを壊しかねない場面が増えてきているのです。
この作者に出逢った当時のような、胸のすく物語を再度期待したいものです。(2020年12月記)