吉原にある老舗妓楼「千惷楼」で人気の女郎が客と心中した。知らせを受けた吉原裏同心の神守幹次郎と会所の番方・仙右衛門は、その死に方に疑いを抱く。真相を究明せんと探索する二人だったが、その前には常に大きな影がつきまとう。そして、吉原自体の存在を脅かす危機が訪れる。幹次郎、そして吉原の運命は―。快進撃の人気シリーズ、一気読み必至の第十九弾。(「BOOK」データベースより)
吉原裏同心シリーズの第十九弾です。
吉原にある老舗妓楼「千惷楼」で起きた女郎とその客との心中騒ぎがた女郎とその客との心中騒ぎがおきます。その死に方に疑いを抱いた吉原裏同心の神守幹次郎と会所の番方・仙右衛門は真相を探るべく探索を始めるのでしたが、そこには吉原の存続にかかわる秘密が関わっていたのです。
これまでは、幹次郎の剣によって幕府を始めとする吉原の外部の勢力の攻勢を乗り越えてきた物語との印象があったのですが、今回はその印象が変わる筋立てでした。
ただ、このシリーズを再度読み始めようと本書を読んだのが三年ぶりのことであり、もしかしたらシリーズ自体の印象が薄れていたためにそのような感じを抱いたのかもしれないし、それとも私個人が歳を重ねたためにそう思ったのかもしれません。
印象の変化の原因は分かりませんが、佐伯泰英という作家の他の作品とは少々シリーズの雰囲気を異にしています。ただ、佐伯泰英の痛快活劇小説であることに違いはなく、楽しめる作品であることに間違いはありません。
本作品は、文庫本で320頁もあります。決して短くはない物語ですが、女郎の心中騒ぎがあり、その女郎の正体、あたしい足抜き方法といった、決して大きくはない出来ごとが次から次へと巻き起こり、一つのパターンではありますが、読者を飽きさせない仕掛けがきちんと施されています。
佐伯泰英という作家がベストセラーを連発する秘密が垣間見えるような作品でした。