幼馴染の汀女とともに故郷の豊後岡藩を出奔し、江戸・吉原に流れ着いた神守幹次郎は、剣の腕を見込まれ、廓の用心棒「吉原裏同心」となった。時は流れ、花魁・薄墨太夫が自由の身となり、幹次郎は汀女、薄墨改め加門麻との三人で新しい生活を始める。幼い頃に母と訪ねた鎌倉を再訪したいと願う麻に応え、幹次郎らは鎌倉へ向かう。旅からはじまる新しい物語、開幕。 (「BOOK」データベースより)
シリーズも新しくなり名称も「吉原裏同心抄」となった、吉原裏同心新シリーズの第一弾です。
汀女と共に吉原に拾われ、吉原のために働いてきた夫婦が、新しい家族を得、三人として吉原と共に生きてゆく物語が始まりました。
新しいシリーズの第一弾は、加門麻の新しい人生の門出に、幼い頃の記憶をたどり母と行った鎌倉へ行ってみたいとの麻の望みに応えて汀女との三人での旅にでます。
ただ、その前に今の吉原で起きている事件を片付ける必要がありました。一つは吉原にある四か所の社の賽銭泥棒であり、もう一つは麻が薄墨時代に可愛がっていて今は新造になったばかりの桜木の様子が気にかかるということでした。
賽銭泥棒は廓外で世話になっている同心の桑平市松の力を借りて事件を解決し、桜季の異変は桜季の姉の死の原因について噂を吹き込んだ人物いたことを突き止め、これをもまた一応の解決を見ます。
やっと鎌倉へと旅立った三人でしたが、そこでも三人を監視する目がつきまとい、館蔵においてもちょっとした事件が待っているのです。
新シリーズとなり、新たな物語の門出、ということになりますが、物語としてはそれほどに変わったところはありません。
ただ、薄墨改め加門麻が神守幹次郎と汀女の住む柘榴庵に共に住むことになったことが変化ではあります。しかし、物語の流れとしてみると変化はないと言っていいと思われます。
「旅からはじまる新しい物語、開幕。」という惹句ではありますが、本書を読む限りでは新しい物語とは言えないようです。今後の展開を期待していようと思います。