『隠蔽捜査シリーズ』とは
本『隠蔽捜査シリーズ』は、キャリアでありながら現場の第一線に立ち、正論を正論として通しきる竜崎伸也という男を主人公とする長編の警察小説です。
この主人公が単なるキャリアというだけではなく、警察官としての原理原則に従い、一切の忖度なく物事を判断するという、非常に珍しく、また痛快で面白い作品です。
『隠蔽捜査シリーズ』の作品
隠蔽捜査シリーズ(2024年04月23日現在)
- 隠蔽捜査
- 果断 隠蔽捜査2
- 疑心 隠蔽捜査3
- 初陣 隠蔽捜査3.5
- 転迷 隠蔽捜査4
- 宰領 隠蔽捜査5
- 自覚 隠蔽捜査5.5
『隠蔽捜査シリーズ』について
第一作目の『隠蔽捜査』は吉川英治文学新人賞を、第二作目『果断』で山本周五郎賞と日本推理作家協会賞長編部門を、シリーズとして吉川英治文庫賞を、それぞれに受賞しているほどのシリーズです。
清濁併せ飲む大人の対応を良しとしないで、その正論が通らないキャリアの世界を渡っていくのだからすごい。
かなりできる人なのでしょう、と思わせる設定が面白い。主人公はその性格のまま周りを巻き込んで事件を解決してしまいます。
その変な性格の主人公が何故か魅力的な人間に見えてきて、早く次を読みたいとなります。
それは主人公が堅物ではあっても、人としての正道を貫いているからなのでしょう。どこか人情小説の心の交流にも似た情感を漂わせる本書は、お勧めです。
また、第八巻の『清明: 隠蔽捜査8』からは、主人公の竜崎の勤務地が神奈川へと移り、それまでの地域の一署長ではなく、神奈川県警刑事部長という新たな地位を得て活躍しています。
このシリーズも永くなり、何となくのマンネリ感を感じていたところでした。作者もそうした声を理解されていたのでしょう。
異動先が警視庁とはあまり仲が良くないとされる神奈川県警というのも面白い設定です。第八巻では早速そうした不仲を取り込んだ構成で読ませてくれました。
新たな地位を得た竜崎の活躍が期待されます。
なお本シリーズは、陣内孝則と柳葉敏郎のコンビ、そして杉本哲太と古田新太のコンビと、局を違えてテレビドラマ化されています。