本『姫川玲子シリーズ』は、女性刑事姫川玲子を主人公とする、ミステリーというよりはサスペンス色の強い作品が多い長編がメインの警察小説です。
作者誉田哲也の作品の中でも登場人物のキャラクター設定がとてもよく、またテンポ良い文章が物語世界に入り込み易い作品で、ベストセラーとなるのも納得のシリーズです。
姫川玲子シリーズ(2023年12月31日現在)
主人公姫川玲子は男勝りの性格で、直観に従い班長として菊田和男巡査部長らを始めとする部下の男たちを引っ張って行きます。
また部下たちも、暴走しがちでどことなく危なっかしい姫川玲子をサポートしながら事件を解決していくのです。
ひたすら感覚で犯人を追い詰める姫川は、天敵ともいうべきガンテツこと勝俣健作警部補から、犯人と同じ思考方法をとる姫川は危なっかしいと指摘されたりもしています。
しかし、レイプという悲惨な過去を持つ主人公の姫川は、その過去をトラウマとして抱えながらも自分を支えてくれ、後に殉職してしまった女性警察官を思いながら職務に邁進していくのです。
本『姫川玲子シリーズ』ではポイントポイントで人情もののような心の交流をも描きながら物語が進んでいくので、読者としても気楽な気持ちで読み進めることができます。
ただ、猟奇的と言っても良い場面があるのでグロいシーンが駄目な人は少々注意が必要かもしれません。
時には、誉田哲也の他のシリーズ『ジウサーガ』とシンクロする遊びがあったりするのも楽しみの一つです。
テレビドラマ、また映画も、竹内結子が主演として姫川玲子を演じ、菊田を西島秀俊、井岡を生瀬勝久という同じキャストで作成されていて、個人的にはなかなか良くできていたという印象のドラマでした。
ただ、ガンテツこと勝俣を武田鉄矢が演じていたのは少々イメージ違いかと思っていましたが、見ているうちに武田鉄矢こそがふさわしいと思えてきたのですから、役者さんは大したものです。
更に、2019年4月からは新たな姫川玲子の物語として『ストロベリーナイト・サーガ』と題したドラマがフジテレビで放映されました。
しかし、キャストが姫川役を二階堂ふみというのはまあいいのですが、個人的には菊田和男をKAT-TUNの亀梨和也が演じるということでしたので、結局見ることもありませんでした。
なお、これまで『姫川玲子シリーズ』の第五弾として記載していた『感染遊戯』は、『姫川玲子シリーズ』としてはカウントしないこととするそうです。
というのも、「将来的に勝俣健作(かつまたけんさく)を主人公とする作品が刊行された場合、『感染遊戯』は「勝俣健作シリーズの第一作」と紹介されるであろうから
」だということです( Book Bang : 参照 )。