『笑う警官』とは
本書『笑う警官』は『北海道警察シリーズ』の第一弾で、2004年の12月に『うたう警官』というタイトルで刊行され、2007年5月の文庫化に際し『笑う警官』と改題された、文庫本で448頁の長編の警察小説です。
その後、2024年2月に角川春樹事務所から新装版として、456頁の文庫本が出版されました。
『笑う警官』の簡単なあらすじ
札幌市内のアパートで、女性の変死体が発見された。遺体は北海道警察本部生活安全部の水村朝美巡査と判明。容疑者には交際相手で同じ本部に所属する津久井巡査部長が浮かぶ。やがて津久井に対する射殺命令までが出た。捜査から外された所轄署の佐伯警部補は、かつておとり捜査で組んだことのある津久井の潔白を証明するため有志たちと極秘裏に捜査を始めるが…。警察小説の金字塔、大ベストセラー「道警シリーズ」第1弾、新装版!(「BOOK」データベースより)
道警本部の婦人警官が被害者の殺人事件が発生し、津久井巡査部長が犯人と断定され、津久井に対する射殺命令まで出た。
その津久井とかつて仕事で組んだことのある佐伯は津久井の無実を信じ、佐伯を中心として津久井の無実を晴らそうと仲間が結集する。
折しも津久井は道警の不祥事について百条委員会に証人として出席する予定だったらしく、隠された事実を感じる佐伯達だった。
『笑う警官』の感想
本書『笑う警官』は、そのタイトルに惹かれ読んでみた作品です。
読んでみたら思いのほかに面白く、結構展開も速めで、テンポ良く読めました。
本書『笑う警官』は出版時は『うたう警官』というタイトルだったのですが、大森南朋主演で、漫才コンビ雨上がり決死隊の宮迫博之も出演して角川映画で映画化もされた折り、文庫化に伴い『笑う警官』と改題されたものです。
ただ、この映画は角川春樹氏がジャズのしゃれた雰囲気を狙って監督したようですが、本書のイメージとは異なりあまり好みではありませんでした。まわりの評判もよろしくなかったようです。
『笑う警官』といえば、若い頃読んだマルティン・ベックシリーズの「笑う警官」を思い出します。
この本はスウェーデンの警察小説なのですが、当時はまっていたエド・マクベインの『87文書シリーズ』に触発されて読んだシリーズでした。ウォルター・マッソー主演で映画化もされ、かなり面白い映画だった記憶があります。
今回佐々木譲の本書『笑う警官』について調べたところ、「マルティン・ベックのような警察小説」と言われて書き始めたとあり、同じタイトルなのだからそれも当たり前かと、納得したものです。
でも、内容は全く違います。即ち、証人として道議会の百条委員会に出席する筈だった津久井を抹殺しようとする道警組織との対決、という構図です。
この不祥事というのが本書内では「郡司事件」呼ばれている事件で、北海道警裏金事件や稲葉事件などの現実に起きた北海道警察の不祥事をもとにしているのです。( ウィキペディア : 参照 )
単に現実に起きた事件を下敷きにした警察小説だと言うにとどまらず、佐々木譲作品の根底にあると思われる主人公の人間性を深く追いかけたハードボイルドタッチの文章も相まって、重厚な作品として仕上がっています。
この物語を第一作としてシリーズ化され、ベストセラーシリーズとなるのですが、それほどに面白い小説だということでしょう。