立て続けに発生した連続誘拐事件。解放された被害者たちは、皆「呪い」をかけられていた―。警視庁きっての特能集団、ここに始動!科捜研から招集された異能の5人(+1)その素顔は、警察内でも厄介視される変人集団!(「BOOK」データベースより)
近時の今野敏の作品の中では最も軽く読める作品と言ってもいいかもしれません。というよりは、私の好みからは若干外れているからそう思うのかもしれませんが、内容が薄いのです。
今野敏の小説にかぎってことではありませんが、この頃の小説は一般的に会話文が多く、改行も多用されているのですが、本書は特にそうで、更には単行本で290頁という頁数だということもあって、簡単に読めてしまいます。
また、内容も、ミステリーであるわりには丁寧な捜査の上に推論があり、更なる捜査の上に結論があるという論理の流れではなく、本書の場合は、特殊能力の持ち主による強烈なプロファイリングがあるので集められた証拠に基づく推論が無く、人間嘘発見器があるために丁寧な証拠固めという過程が要りません。
言ってみればミステリーの醍醐味の肝心な部分が抜け落ちているので、私の好みには合わないのだと思われます。
一般的に、本書のような超能力者的存在があれば、それに合わせたミステリーの構成があるはずなのですが、このSFチックなシリーズでは、『宇宙海兵隊 ギガース』シリーズのような少々異色のSF作品を書く作家である今野敏にしては、作風が簡単です。
今野敏の小説らしく、一定の面白さは否定しませんが、他の作品ほどの期待はしない方がいいと思います。