今野 敏

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成田空港に一人のアメリカ人が降り立った。各国諜報関係者の環視のなか、米大使館の車に乗りこんだ男は、尾行する覆面パトカーに手榴弾を放った!ジョン・カミングス、元グリーンベレー。東京の機能を麻痺させるべくCIAが送りこんだプロのひとりだ。日米経済戦争の裏で暗躍する組織に対抗すべく、内閣情報調査室の陣内平吉が選んだ男とは?―。(「BOOK」データベースより)

 

本書は今野敏の初期の小説によくあった伝奇小説の雰囲気をまとった長編の格闘技小説です。

それもそのはずで、本書の最終頁よると、「1990年5月に徳間書店から刊行された『犬神族の拳』を改題し」たものだとありました。

 

具体的には、「内調特命班」というタイトルにもかかわらず、物語は諜報関係の話ではなく、古武術をメインとする武道家の話です。

日米の経済戦争を背景に、アメリカの優位を保つために日本の社会、そしてマーケットに騒動を起こそうとするCIAから依頼された三人のエージェントを排除するために立ち上がったのが内閣情報調査室の陣内平吉により集められた三人の武道家でした。

本書が出版されたころの今野敏の作品には、本書のように舞台設定がざっくりとしており、人間の書き込みが薄い物語が多かったように思います。代わりに、自身が武道家という強みで挌闘場面の描写は読み応えがあるものでした。

また敵役もそれなりに魅力ある人物が要求されますが、この敵役にしても人物造形は簡潔だったように思います。本書の場合も同様で、日米の経済戦争という舞台での格闘技を習得しているプロのテロリストの三人というだけの設定です。

 

また、アメリカが優位に立つために日本国内で麻薬をばら撒き、銃器を供給して中国マフィアなどを暴れさせ、国内治安を悪化させるということですが、麻薬や銃器の供給や、日本警察を非力なものと描くことが日本経済の弱体化に結び付くなどの短絡的な設定が目立ちます。

本来は、こうした舞台設定も丁寧にやってほしいところではありますが、今野敏の小説は、物語は単純ではあっても単純な物語なりの論理を持たせてあるため、軽く読み飛ばすにしてもそれなりの説得力を持っていて、物語としての破綻を感じません。

そうなると、伝奇小説的な古来の伝統武術の存在もこの物語の中では必然性を否定できなくなるのです。

まあ、こうした感想も私が今野敏の小説のファンだということが大きく影響しているのかもしれません。

 

ともあれ、痛快小説としての格闘技小説としては一応の理由さえつけば、あとは挌闘場面の描写に尽きます。そして、自らも格闘家である今野敏の格闘場面の描写は他の追随を許さないものがあるのです。

三十年近くも前の、それは今野敏が作家としてまだ駆け出しに近い頃に書かれた小説としては十分に面白さを備えた物語だということができます。単純に古武術についての蘊蓄を、そして主人公らの武術を楽しむべき物語でしょう。

 

ちなみに、本シリーズの続編として『内調特命班 徒手捜査』があり、内閣情報調査室の陣内平吉により再び本書の三人が召集され、大活躍を見せるのです。

 

[投稿日]2019年03月24日  [最終更新日]2019年3月24日
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