横山 秀夫 雑感
この作家の長編作品を見ると、殆どの作品が個人と組織とが描かれているように思えます。まあ、小説というものが人間、社会を描くものである以上、どの作品もそうだと言われればそうなのですが、横山秀夫の場合は組織の中の個人という視点がより強調されているように感じるのです。
「半落ち」にしてもそうだし、「クライマーズ・ハイ」「64(ロクヨン)」と、どうしても主人公と組織の論理とが対立することになり、その組織の論理に立ち向かう主人公の姿が読者を捉えて離さないのではないでしょうか。主人公は悩みながらも信念を貫き、そのことに対して読者は喝采を送らずにはいられないように感じるのです。
短編集でも主人公の逞しさは同じ様に描かれています。例えそれが女性であっても同様です。
とにかく横山秀夫という人の作品は、人間を緻密に描かれていて、物語そのものも重厚に感じます。登場人物は逞しく、迫力のある人間ドラマが描かれており、読んでいて飽きることがありません。
「松本 清張」「高村 薫」「東野 圭吾」といった人たちの作品でもそうなのですが、社会性とはまた違って、より以上に前提となる人間をも含めた舞台が緻密に描かれていて、そこで展開される人間ドラマこそが魅力だと思えるのです。お勧めです。
[投稿日] 2015年04月23日 [最終更新日] 2015年11月11日