長岡 弘樹

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小学館

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警察学校を舞台にした珍しい設定の小説で、『週刊文春ミステリーベスト10 2013年』の第1位、『このミステリーがすごい! 2014年版』で第2位に入った、評価の高い、全六編からなる連作の短編集です。

ある警察学校の学生をそれぞれの話の主人公として話は進みます。職務質問や取り調べのやり方、交番実習、運転技術等々、普段私たちが目にすることも耳にすることもないであろう事柄を織り込みながら、警察学校の学生の日常的な暮らしの中での起こるミステリーとも言える出来事が語られていきます。

各話に登場する学生たちはそれぞれに個性の異なる学生です。全体を統括する立場の教官として風間公親というこれまたミステリアスな男が登場します。この教官が魅力的であり、各話に少しだけ顔を出します。そして強烈な印象を残しながら物語をまとめていくのです。

本書の魅力はそうしたよく書きこまれた個々の登場人物と、なにより個別の出来事のアイデアがよく練られているところにあるのでしょう。個別の出来事の伏線の張り方がうまく、更に一種の青春小説とも言えそうな物語のなかで、回収作業もうまく処理してあるのです。ただ、この点に関しては、謎そのものの解明にではなく、謎解きの過程や謎解きにかかわる人間の描き方に興味がある私の印象なので、異論があるかもしれません。

一方、鬼教官たちのいじめとも言えそうな描写や一般社会とは異なる決まりごとなど、綿密な調査のうえでの描写でしょうから間違いはないのでしょうが、若干違和感を感じないでもありません。でも、強烈な縦社会である警察のことですし、あくまで虚構である小説でのことですから、そこはあまり言うべきところではないのでしょう。

『教場』という作品から思い出す、設定や作風の似た作品を考えましたが、出てきませんでした。それだけ本作品がユニークだということだと思います。強いて言えば、作者本人が参考にしていると明言している 横山秀夫作品を挙げることができるでしょうか。

とはいえ、物語にぐんぐんと引き込まれていったのは間違いない事実であり、警察小説の新しい書き手として非常に楽しみな作家さんの登場は実に楽しみです。

[投稿日]2015年10月19日  [最終更新日]2015年10月19日
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推理小説の分野は佳品が多く絞ることが難しい分野ですね。個人的な、あくまで個人的な参考意見だと思ってください。
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凍える牙 ( 乃南 アサ )
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