謎の読売屋主人、庄之助に叩きのめされた湯瀬直之進は以来、庄之助の影に苛まれ、秀士館の稽古も精彩を欠いた。見かねた倉田佐之助は、友として庄之助の正体を探る役目を買って出る。その頃、表には出ないものの、江戸の大店が大金を強請り取られる事件が立て続けに起きていた。探索する南町奉行所同心の樺山富士太郎と、庄之助の身許を洗う佐之助の目が、徐々に同じ像を結んでいく。緊迫の展開を見せる、大人気書き下ろしシリーズ四十一巻!(「BOOK」データベースより)
口入屋用心棒シリーズの四十一弾の長編痛快時代小説です。
庄之助の登場してきた前巻から話の面白さが増してきています。
前巻で庄之助と立ち合い完敗した湯瀬直之進は、夢の中では真剣で斬られる自分を感じるほどに打ちのめされていた。直之進の様子がおかしいことを見抜いた倉田佐之助は、庄之助に勝つために、自分に庄之助のことを調べさせろと言う。
一方富士太郎は、岡っ引きの金之丞は庄之助の秘密を知り殺されたと推測して、金之丞の下っ引きの伊助から聞きだした金之丞の言葉をもとに、例繰方の高田観之丞から七年前の事件について調べてもらっていた。
それは、御政道批判を繰り返した息吹屋千之助という読売屋の事件であり、その事件で息吹屋が「雪谷」という言葉を口にしていたというものだった。その上、息吹屋千之助の暮らしていた場所が、かわせみ屋のある牛込原町というのだ。
同じ頃、剣術道場を訪ね歩いていた佐之助も庄之助の人相書きの男は「雪谷」という名であることを聞きこんでいた。
翌日、富士太郎は、上役の与力の荒俣土岐之介から、五軒の大店がそれぞれに二千両という大金を強請られているらしく調べるようにと命じられる。
謎に隠された敵役の正体が次第に明らかになっていきます。その過程で活躍するのは富士太郎であり、そして佐之助です。
ここらはいつもの通りの物語の流れで、富士太郎と佐之助という二人のそれぞれの探索の道筋が、次第に一本の流れにまとまっていきます。
庄之助の企図が次第に明らかになっていく中で、佐之助も庄之助の剣の腕を知り、その強さに驚きます。
剣の腕が圧倒的に強い庄之助を直之進は、そして佐之助はどのように倒すのか、関心はその点に移っていく中で、本書のクライマックスは意外な結末でを迎えるのです。