『口入屋用心棒(47) 猿兄弟の絆』とは
本書『口入屋用心棒(47) 猿兄弟の絆』は『口入屋用心棒シリーズ』の第四十七弾で、2020年12月に文庫版で刊行された、339頁の長編の痛快時代小説です。
『口入屋用心棒(47) 猿兄弟の絆』の簡単なあらすじ
富士山の噴火が収まりをみせない中、人心の乱れる江戸の町を義賊・猿の儀介一味が跳梁していた。今宵も本郷の油問屋に押し入った儀介一味は二千両を奪い、人を殺めて闇に消えた。時を同じくして、市中の夜回りをしていた倉田佐之助らは、とある長屋の屋根から小判をばら撒く忍び頭巾の男と遭遇する。そんな折、湯瀬直之進のもとに悪い噂のたえない米問屋・岩田屋の用心棒仕事が舞い込むが…。江戸庶民怨嗟の商家から金を奪い、その一部を貧しき民に分け与える儀介一味の真の目的とは!?書き下ろし大人気シリーズ第四十七弾!(「BOOK」データベースより)
数日前に老中首座についたばかりの堀江信濃守和政から、自分の懐を豊かにするために取り潰すにいい藩を問われた岩田屋恵三が出羽笹高を領する高山家の名をあげたことから、高山家の取り潰しが決まった。
その頃、江戸の町を猿(ましら)の儀介と呼ばれる盗賊がすでに三軒もの商家を襲って大金を奪い、その金を庶民にばらまいていたため、義賊とあがめられていた。
二人の門弟を連れて市中見廻りをしていた倉田左之助は、猿の儀介が油問屋の加藤屋を襲い人を殺し逃走する場面に出会うもののこれを取り逃がしてしまう。
翌朝、口入屋である米田屋の琢ノ介が用心棒の依頼を願ってきた。依頼主は阿漕な商売をしている商家として西の大関に挙げられている岩田屋だというのだ。
その仕事を直之進が請けることとなったが、その夜早速猿の儀介が忍び込んできたのだった。
『口入屋用心棒(47) 猿兄弟の絆』の感想
本書『口入屋用心棒(47) 猿兄弟の絆』では、噴火した富士山の爆鳴が轟くなかの殺伐とした江戸の町が舞台となっています。
ただ、物語自体はある必要から、非道な商売をしている商家を襲う猿の儀介と呼ばれる義賊の物語であって、富士山の噴火とは関係はありません。
猿の儀介の行動自体は、本書をもって終わることになるのでしょうが、もしかしたらこのシリーズの今後の展開にもかかわってくることになるかもしれません。
また、今回直之進が詰めることとなった岩田屋に関しても次巻に続く事件が勃発しており、こちらの面でも新たな展開へと繋がっています。
しかしながら、ここしばらくなんとなく思っていたことではあるのですが、このシリーズの面白さが薄れていくばかりになっているように思えます。
かつては鈴木英二という作者の魅力の一つでもあった登場人物の独特な会話にしても、日常の会話の中で普通は話さないだろう内心を対話の中でそのままに発し、会話として普通に成立させたりと微妙に変化してきているようです。
また、痛快小説ではある程度仕方のないご都合主義的なストーリー展開も、このシリーズではその程度がはなはだしいと感じられたり、違和感が大きくなって来るばかりです。
極端を言えば、少なくとも本シリーズに関しては続編を読むだけの魅力が薄れてきているのも事実です。
単に物語の展開がマンネリなどに陥っている、ということよりも、ストーリー展開自体に魅力を感じなくなっているのですから致命的です。
どうにも、私の肌に合わなくなってきているのかもしれません。
あと一巻くらいは読んでみて、そのときに判断しようかと思います。
本書『口入屋用心棒(47) 猿兄弟の絆』の印象としても、そのようなことを思うほどに魅力を感じなくなってきている、と言うしかない作品でした。