鈴木 英治

口入屋用心棒シリーズ

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本書『江戸湊の軛-口入屋用心棒(46)』は、『口入屋用心棒シリーズ』第四十六弾の長編の痛快時代小説です。

本書だけの単発の物語のようで、シリーズとしての醍醐味はあまり感じられない作品でした。

 

『江戸湊の軛』の簡単なあらすじ 

 

富士山の噴火によって江戸市中が混乱する中、江戸湾の入り口に三艘の船が碇を下ろし、湊に入ろうとする船を攻撃した。海上を封鎖しようとする一党の真の目的は何なのか!?秀士館の師範代、湯瀬直之進と倉田佐之助がその真相に迫る!人気書き下ろしシリーズ第四十六弾。(「BOOK」データベースより)

 

富士山が噴火する中、五十部屋唐兵衛は三艘の船で江戸へと荷物を運ぶ船を大砲で足止めし、江戸湊を封鎖しようとしていた。

一方、たまたま通りかかった倉田左之助たちが夜陰に紛れて上陸しようとする不審者を見つけその後をつけると、武家屋敷や長屋の井戸の中に何かを投げ入れる姿があった。

翌日、樺山富士太郎のもとに、その井戸の水を飲み死人が出たとの連絡が入る。

また老中の本田因幡守は、南町奉行の曲田伊予守に対し川崎沖に停泊中の三艘の大船を見てくるようにと命じ、また船手頭の清水矢右衛門に三艘の大船を沈めるようにと命じるのだった。

 

『江戸湊の軛』の感想

 

本書『江戸湊の軛』では五十部屋唐兵衛という新たな人物が登場し、何故か突然に江戸への物資搬入を阻止しようとします。

丁度富士山が爆発し、世情不遜な折でもあり、五十部屋唐兵衛の思惑は成就しそうになりますが、その暴挙を、湯瀬直之進や倉田左之助らが、というよりも左之助が中心となってこれを食い止めようと活躍するのです。

 

このところの本『口入屋用心棒シリーズ』では、物語の流れに全く関係のない事件や、日々の出来事などについての意味のない会話などが目立ってきたような気がします。

読み終えてから見ても、その場面は意味のない挿入としか思えない場面です。作品の雰囲気造りなどに役に立っていると言えばそうかもしれませんが、その頻度も限度があります。

本書『江戸湊の軛』でもそうで、湯瀬直之進が煮売り酒屋で暴れている浪人者を取り押さえる場面など、富士山の噴火ですさんだ雰囲気を表現するにしては長すぎる印象です。

 

このところ、鈴木英二という作家の本シリーズ以外の作品はあまり読んでいません。

一年ほど前に『義元、遼たり』という作品を読んだだけです。しかし、そこでもある人物の会話を「意味を見出せ」ないと記しています。

つまりは、鈴木英二の他の作品の表現に対して違和感を書いているのですから、本書に限ったことではないのです。

 

 

本書『江戸湊の軛』の内容にしても、五十部屋唐兵衛の江戸湊封鎖という前代未聞の行いに際し、その部下として少なくとも百人近くの者が参画しています。

そして、そのほとんどが死地に赴くことを理解し、納得しているというのです。五十部屋唐兵衛の個人的な思惑に、それだけの人数が一人も欠けることなく参画するというのは信じられません。

ただ、この点は部下個々人がそれぞれの遺恨を抱えていると考えればまだ理解できるかもしれません。

しかしながら、いち私人が西洋と取引をして大砲や最新式の銃などを手に入れるということ自体、無理があると思えます。さらに、大砲の訓練などを人目に触れることなく行ってもいます。

どうにも納得できないことが多すぎるのです。

 

痛快時代小説として少々の無理な設定は、それなりの舞台を用意するということで許容されても、本書のような設定は個人的には許容範囲外です。

少なくとも本『口入屋用心棒シリーズ』は、本来は本書『江戸湊の軛』のような荒唐無稽、というか緩すぎる舞台設定を受け入れるような世界観ではないと思うのです。

 

言うまでもなく以上は個人的感想であり、多くの読者は今の鈴木英二作品を支持しているのでしょうから素人の感想でしあありませんが、どうも近時の鈴木英二作品には違和感を感じる場面が多々あります。

本来、私の好みに合致した、とても面白い作品を書かれている作家さんなので、以前のような面白さを取り戻してもらいたいと思うだけです。

[投稿日]2020年12月24日  [最終更新日]2020年12月24日
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