誉田 哲也

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ジウ サーガ』とは

 

「ジウ三部作」と呼ばれる最初の三作から、現代の仕事人を描いた作品である『新宿セブン』を契機として単なる警察小説を越えた壮大な物語として成長していく一連の物語を指します。

誉田哲也の作品中でも『姫川玲子シリーズ』と並ぶ人気シリーズであり、一般にはもちろん個人的にも入れ込んでいるエンターテイメントシリーズです。

 

ジウ サーガ』の作品

 

 

ジウ サーガ』について

 

本『ジウ サーガ』の最初の三作は「ジウシリーズ」としての新宿事件になだれ込む、一連の事件を扱った物語です。

次の『国境事変』は、「ジウシリーズ」で中心的な役割を担った東警部補の物語で、公安警察とのかかわりを描いたシリアスな作品です。

ハング』は、『歌舞伎町セブン』の重要メンバーである“ジロウ”にまつわる話で、かなり重く、暗い話となっています。

つまり『国境事変』と『ハング』とは、ジウサーガの中のスピンオフ的な作品として位置づけられ、『歌舞伎町セブン』から始まる、現代の「仕事人」の物語である『歌舞伎町セブンシリーズ』への橋渡し的な意味を持っています。

こうしてこれらの物語は単なる「ジウ三部作」に連なる物語としてではなく、それよりも大きな意味合いを持つものとして、長編の武勇伝とか冒険談などの意味を有する<サーガ>と言われるようになったと思われます。

 
ジウ三部作 登場人物

門倉美咲 (二巻)警視庁特殊班捜査係【SIT】 巡査 優しく穏やかで、犯人への交渉にも優しさを持ってあたる犯人と話す際に思わず涙してしまう事を名演技と称され、まるでカンヌ映画祭の女優のようだということから、他の隊員たちからカンヌと呼ばれる隊のマスコット的な存在。
     (三巻)碑文谷署生活安全課少年係巡査。27歳。連続児童誘拐事件の黒幕ジウを追う。
伊崎基子 (二巻)警視庁特殊班捜査係【SIT】 巡査部長 幼い頃からレスリング・柔道・剣道を学び、実践的な格闘術に優れた伊崎基子。その性格は沈着冷静で孤独、群れることを嫌い自分の高い戦闘能力に自信を持ち、犯人を逮捕すると言うよりも敵を倒すという感覚で行動する一匹狼。
     (三巻)女性初の特殊急襲部隊【SAT】隊員となるが、特進を果たし。現在、上野署交通捜査課巡査部長。二十五歳。独自にジウを追い、謎の男・宮地と接触する。

東 弘樹 捜査一課殺人犯捜査三係主任警部補。美咲と共にジウを追う。
麻井憲介 第一特殊班捜査(SIT)二係長。警部。美咲と基子の元上司。
西脇吾郎 刑事部部長。警視監。警備部長の太田とは対立関係。
太田信之 警視庁警備部部長。警視監。出世街道を突き進むキャリア。
松田浩司 警備部警備第一課課長。警視正。SATの積極的な実践投入を画策。
和田 徹 捜査一課課長。警視正。
小野茂夫 SAT第一小隊隊長。警部補。
橘 義博 SAT部隊長。警部。
雨宮崇史 SAT第一小隊隊員。
竹内亮一 「紗也華ちゃん事件」の実行犯グループの一人。元陸自レンジャー。

木原 毅 チンピラまがいのフリーライター。基子と共にジウを追う。
宇田川舞 「利憲くん事件」「紗也華ちゃん事件」の裏で発生した誘拐事件の被害者。

宮地忠雄 謎の男。ジウと共に行動している。
ジウ   正体不明。一連の児童誘拐犯事件の黒幕?

 

今回、ジウサーガを再度読み直しています。

当初「ジウ三部作」として、普通の警察小説とは異なった毛色を持つ物語として読み始めたシリーズでした。

ジウ三部作を読んでいるときは、まさか歌舞伎町セブンシリーズのような話の展開になるとは想像もできず、毛色の変わった警察小説として軽く読んでいたのです。

その物語がさらには『姫川玲子シリーズ』とのコラボレーションを成功させるほどの物語として成長するとは露ほどにも思っていませんでした。

その後の『国境事変』も『ハング』も、東警部補や歌舞伎町セブンのメンバーのジロウの物語として位置づけられると知り、だからこそ、再度このシリーズを頭から読み直しているのですが、将来の展開を知りながらの読み直しは一段とその面白さを掻き立ててくれました。

 

歌舞伎町セブンシリーズ中の『歌舞伎町ダムド』という、ジウにあこがれを抱いた若者の物語にしても大きな物語の流れの中で読み返してみるとエンターテインメント小説としての更なる面白さを確認することができました。

その上、『ノワール-硝子の太陽』と『ルージュ: 硝子の太陽』という表裏二作を駆使しての『姫川玲子シリーズ』とのコラボレーションという試みはファンにとってはたまらないものでした。

その後、この二つのシリーズはそれぞれにまた進み始めています。今後またこの二つのシリーズの交錯が見られることになるのかもしれません。でも、毛色は異なる二つのシリーズですので、合体することまではないと思いますが、コラボはまた読みたいものです。

こうしてみると、『姫川玲子シリーズ』もまた当初から読み直してみようと思っています。

[投稿日]2019年04月28日  [最終更新日]2023年9月6日

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