誉田 哲也

ジウサーガ

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本書『新装版-ジウI-警視庁特殊犯捜査係』は、文庫本で427頁の、ジウ三部作第一作目の長編警察小説です。

本書は、先では『新宿セブン』などと連なる『ジウサーガ』として位置付けられるシリーズで、面白さ満点のエンターテイメント小説です。

 

『ジウI-警視庁特殊犯捜査係』の簡単なあらすじ

 

〈ジウ〉サーガ、ここに開幕――。都内の住宅地で人質籠城事件が発生。所轄署や捜査一課をはじめ、門倉美咲、伊崎基子両巡査が所属する警視庁捜査一課特殊犯捜査係も出動した。人質解放へ進展がない中、美咲は差し入れ役として、犯人と人質のもとへ向かうが……!? 籠城事件と未解決児童誘拐事件を結ぶ謎の少年、その背後に蠢く巨大な闇とは?(「BOOK」データベースより)

 

「利憲くん誘拐事件」も決着を見ないままに、荻窪署管内で立て籠もり事案が発生した。

門倉美咲は食事の差し入れをのために犯人の立て籠もる屋内へと入りさらなる人質となるが、犯人逮捕の際に、下着姿とならされた姿をマスコミに撮られてしまう。

ところが、この事件の犯人である岡村は未解決の「利憲くん誘拐事件」にも関与している疑いが浮上し、その岡村への訊問の中でジウという名前が浮かび上がってくるのたった。

 

『ジウI-警視庁特殊犯捜査係』の感想

 

本書『ジウI-警視庁特殊犯捜査係』の主人公は、カンヌと呼ばれる愛称からもわかる優しさを持った門倉美咲巡査と、幼い頃からレスリング・柔道・剣道を学び、実践的な格闘術に優れた孤高の一匹狼である伊崎基子巡査部長の二人です。

SITと称される警視庁特殊犯捜査係に所属するこの両極端な性格の二人を中心としてこの物語りは展開します。

 

他に重要な登場人物としては、東弘樹警部補やSATの雨宮崇史隊員らがいます。

マスコミの前に下着姿をさらした美咲は、碑文谷署生活安全課少年係へと異動になり、そこにいた東警部補と組んで連続児童誘拐事件の犯人と目される“ジウ”を追うことになります。

また、伊崎基子巡査部長は異動先のSATで雨宮という隊員と知り合い、さらに「紗也華ちゃん事件」の現場で美咲と邂逅することになりますが、そこでは雨宮をめぐる悲劇的な出来事が起きてしまうのでした。

 

本『ジウサーガ』は推理小説とは少々呼びにくい気がします。発生した児童誘拐事件の犯人を追う刑事らの動向が描かれたり、事件の裏に隠された謎を追及することなど、形としては推理小説と言えるのかもしれません。

しかし、謎の追及は二番手であり、まずはストーリーの展開それ自体が主役だと思われます。

つまりは、この『ジウサーガ』はエンタテイメント小説として様々な要素が組み込まれていて、さまざまな楽しみ方ができる物語になっているのです。

 

当初に述べたように、本書『ジウI-警視庁特殊犯捜査係』は連続して起きる児童誘拐事件を追う警察の姿が描かれていて、第一義には警察小説であることに間違いはありません。

ただ、その中で門倉美咲と井崎基子という二人の女性の描き方の違いがあります。

この両極端な女性あり方だけを見ていくと、この作者の底抜けに明るい青春小説の『武士道シリーズ』という作品に出てくる攻撃的な磯山香織と温厚な西荻早苗という二人の女性が思い起こされ、遠くに青春小説の香りを漂っているのです。

 

 

次に、伊崎基子という女性だけを見ていくとSATでの訓練の様子などは格闘小説のようでもあります。

そして、この『ジウサーガ』が二巻三巻と続いていく中では、エロスとバイオレンス以外の何物でもない、いかにも 誉田哲也らしい描写があり、その先には単なる警察小説の枠を超えたアクション満載の冒険小説としての流れが待っているのです。

つまりは、このシリーズは 誉田哲也の作品世界を構成するあらゆる要素が詰まっていて、さまざまな読み方ができると思われ、エンターテイメント小説としてどこまでも楽しむことができる作品として仕上がっているのです。

[投稿日]2019年04月30日  [最終更新日]2021年2月28日
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誉田哲也の<ジウ>サーガ|特設ページ|中央公論新社
中央公論新社特設ページ
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