日本最大の歓楽街・新宿歌舞伎町。そこに、全裸の男女を凌辱し、惨殺することに快感を得る謎の男がいた。彼は七年前に起きた「歌舞伎町封鎖事件」でジウと出会い、自らもジウになろうとしていた。再び動き出す「新世界秩序」の陰謀、巻き込まれてゆく新宿署の東弘樹警部補、そして「歌舞伎町セブン」。『ジウ』『国境事変』『ハング』、そして『歌舞伎町セブン』、全ての物語がここに繋がる―!「BOOK」データベースより)
『ジウサーガ』の第七弾で、現代の「仕掛人」の歌舞伎町セブンの物語である長編小説です。
新宿の街を守るために結成された七人からなる歌舞伎町セブンを描いた『歌舞伎町セブン』の続編です。今回は「ダムド」と名乗る殺し屋がセブンの相手として現れます。
誉田哲也の小説らしく、ダムドという殺し屋の殺戮場面はほとんどグロテスクと言えるほどです。だけど、タイトルにもなった「ダムド」の存在感があまりありません。
本書冒頭で登場してしばらくは強烈な個性をもって描かれていて、それなりに期待をもたせてくれます。
しかし、冒頭のダムド目線の個所が終わり、リュウらが中心となるこの物語本来の流れに移ると、従来のアクション小説としての顔を取り戻します。そして、『ジウ三部作』や『国境事変』などの物語の流れに乗った小説であることを思い出させるような、意外性をもった物語として展開を始めるのです。
そうなると、ダムドの影が薄くなり、結局ダムドとは何のために登場したのか、という思いだけが残ります。
物語は、『ジウ三部作』からの登場人物である東弘樹警部補がこの新しい物語の配役として登場したり、敵役の組織「新世界秩序」がその貌をのぞかせたりと、新たな展開を見せ面白くなっています。前作の『歌舞伎町セブン』よりは確実にアクション小説としての面白さも増していると思います。
現代の「必殺仕事人」というには舞台が新宿歌舞伎町限定という狭さがありますが、「歌舞伎町セブン」の存在理由が新宿を守ることにあるのですから、それも仕方のないところです。
以上が最初に本書『歌舞伎町ダムド』を読んだ時の文章です。メモによると2015年9月のことであり、今回の再読で『歌舞伎町セブン』で書いたと同様の変化を感じます。
「ジウサーガ」の中に位置づけられる本書は、東警部補と歌舞伎町セブンとの関りや、敵役の「新世界秩序」という組織の巨大さを明確にし、今後のこの物語の方向性を明確にしているようです。
何より、本書ではミサキとジロウの過去が明らかにされ、『ジウ三部作』や『ハング』から本書に続く流れが示され、「ジウサーガ」として確立したのではないでしょうか。
この後、「ジウサーガ」は『硝子の太陽』の二冊で『姫川玲子シリーズ』と同一時系列に存在していることが明確にされていきます。
同時にエンターテインメント小説としての面白さも一ランク上の次元に上ることになる、と思うのです。