イラスト1
Pocket

西村 寿行 雑感

最初に読んだのが「瀬戸内殺人海流」でした。公害をテーマにした社会性の強いミステリで、この本以来殆どの作品を読んでいると思います。

この後次第に「君よ憤怒の河を渉れ」に代表される冒険小説へとシフトし、「鯱シリーズ」のようないわゆるハードロマンと称される作品群へと移っていきます。

西村寿行という人は自ら狩猟をし、それもかなりの腕前だったのですが、ある時殺生をすることの無意味さを悟り、狩猟禁止を唱えるようになったと、どの本かのあとがきに書いてありました。「黄金の犬」など、動物を主題にした作品も数多くあり、動物に対する愛情が透けて見えます。

ハードロマンと括られる作品はエロスとバイオレンスの描写がかなりのもので、そういえば初期作品を除けば大半の作品にその要素があると言えるかもしれません。

その一方で、「滅びの笛」や「癌病船」のようにバイオレンスタッチはありつつも社会性の強い作品も書かれています。

エロスやバイオレンスが嫌いな方は別として、面白い本、エンターテインメント性の強い本という意味では上位にランクされる作家ではないでしょうか。

ただ、今ではそのほとんどの作品が絶版であるらしく、残念ながら古書若しくは図書館から借りて読むしかないようです。ただ、角川文庫から電子書籍版で多数の作品が出版されるようです。

我が家の埃をかぶった本棚から、昔買った西村寿行の一連の作品群を見つけてきました。また少しずつ再読してみようと思います。

[投稿日] 2015年04月15日  [最終更新日] 2015年10月14日
Pocket

おすすめの小説

おすすめのアクション小説作家

エンターテインメント性を重視した、エロスとバイオレンス作品を中心に集めています。
大沢 在昌
多彩な作家で、冒険小説をメインに書かれていますが、「新宿鮫」を最初とする、新宿署の鮫島警部の活躍を描く「新宿鮫」シリーズはお勧めです。シリーズ三作目の『毒猿』はシリーズ最高との呼び声が高く、シリーズ三作目の『無間人形』で直木賞を受賞しています。
夢枕 獏
この作家も叙情性豊かな物語から、山岳小説、格闘小説と多方面の顔を持っています。中でも「魔獣狩り 」は「サイコダイバー」シリーズとも呼ばれていて、単純に楽しめる伝奇アクション小説です。
菊地 秀行
もっぱらエロスとバイオレンス満開の伝奇ホラー作品を書かれています。ホラーとは言っても異世界のクリーチャーが登場するということで、「魔界行シリーズ」が初期の作品ではあるものの、この作家のエッセンスが詰まった作品だと思います。
楡 周平
Cの福音」を第一部とする、全6部からなるシリーズものです。大藪春彦の世界を彷彿とさせる作品で、二人の主人公が作品ごとに交互に活躍します。
樋口 毅宏
日本のクエンティン・タランティーノと言われた「さらば雑司ヶ谷」がデビュー作です。様々な作品へのオマージュ、影響、引用で成り立つ奇想天外としか言いようのない物語は、エロスとバイオレンスが炸裂しています。
高野 和明
グレイヴディッガー」は、主人公八神俊彦というワルの、ある一夜の逃避行を描いた作品で、その疾走感は素晴らしいものがあります。また「ジェノサイド」は、2012年版の「このミステリーがすごい!」第一位を獲得した作品で、アクション性は控えめですが、スケール感は増大しています。
福井 晴敏
スケールの大きい作品を多数発表されています。ミニ・イージスシステム搭載ミサイル護衛艦「いそかぜ」を舞台に、自衛官が活躍する「亡国のイージス」は、日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞、大藪春彦賞を受賞しています。