誉田 哲也

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文藝春秋

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本『妖シリーズ』は、誉田哲也お得意のエロスとバイオレンス満載のエンターテイメント小説です。

本シリーズの特徴を挙げるとすれば、まず挙げるべきは主人公が人間ではないということでしょう。つまり、主人公は四百年という年を経た吸血鬼です。

 

妖シリーズ(2020年09月23日現在)

  1. 妖の華
  2. 妖の掟
  1. 妖の絆
  2. 妖の旅
  1. 妖の群

 

『妖シリーズ』の各巻タイトルは、「小説丸」での誉田哲也インタビュー記事にあった作者の言葉から拾い出したものです。

ですから、第三巻以降は作者誉田哲也の出版予定ということになります。

 

そもそも本『妖シリーズ』の第一巻は、第二回ムー伝奇ノベル大賞優秀賞を受賞し、後に『妖の華』と改題された『ダークサイド・エンジェル 紅鈴 妖の華』というタイトルで2003年に刊行された作品です。

ムー伝奇ノベル大賞は学習研究社刊行の雑誌「ムー」が主催していましたが、第五回まで存続したそうです(以上『妖の華』文庫版 杉江松恋氏の「あとがき」から)。

この第一巻『妖の華』が、作者の誉田哲也のデビュー作だそうですから、才能ある人の作品は最初から見事なものだと感心せざるを得ません。

 

本『妖シリーズ』の主人公は紅鈴(べにすず)と言い、四百年も前に一人の吸血鬼から血分けを為され、不死の身になった女です。

この女が、身長は160センチに満たない、細身の女で長い黒髪に黒々と潤んだ瞳をした黒豹のような女で、体臭が妙に男をくすぐると表現されています。

このエロチックな女がソープで少しの間気絶させた客の男から血を飲んでいるのです。もちろん、ソープですからベッドシーン満載です。

さらに、暴力団とのトラブルを抱えていて、当然のことながらバイオレンス満載の展開となります。

 

本『妖シリーズ』の吸血鬼、紅鈴は西洋の吸血鬼とは異なる純粋の和物である「闇神(やがみ)」です。

ですから、十字架もニンニクも紅鈴たちには何の影響もなく、ただ、太陽の光、厳密には紫外線に当たると皮膚が焼け、ひどいと死に至ります。

また、単純に人間に噛みついて血を吸ったからといって、その相手が吸血鬼になるわけでもありません。被害者は血が吸い取られるだけで、献血と変わりないのです。

 

伝奇小説、と言えば私にとってまずは 半村良です。その作品での吸血鬼の話と言えば『石の血脈』があります。

吸血鬼や狼男など世界各地に残る各種伝承を織り込みながら、人間の不死性への欲望を絡めて、とにかくスケールの大きなほら話をその筆力で一気に読ませている作品です。

それまでにも吉川英治の『鳴門秘帖』や国枝史郎の『神州纐纈城』などの作品はありました。

しかし、個人的には 半村良の『石の血脈』や『産霊山秘録』などの作品が伝奇SF小説の魅力を教えてくれたと思っています。

 

 

その後、エロスとバイオレンスの伝奇小説となると、 夢枕獏菊地秀行を避けては通れません。

夢枕獏には「サイコダイバーシリーズ」とも呼ばれる『魔獣狩りシリーズ』があります。

このシリーズは『魔獣狩りシリーズ』と『新・魔獣狩りシリーズ』と名を変えて続き、それが全体として「サイコダイバーシリーズ」となり祥伝社ノン・ノベル版で全二十五巻あります。

 

 

また、 菊地秀行には異世界のクリーチャーと戦う、エロスとバイオレンス満開の作品である『バイオニック・ソルジャーシリーズ』などがあります。

 

 

本書『妖の掟』の主人公は、『全国妖怪事典』(千葉幹夫・編)という書物に書いてあった山姫という妖怪をヒントに作り上げたキャラクターだそうです( 小説丸 : 参照 )。

ここで「吸血鬼」と言えばブラムストーカーのトランシルバニアのドラキュラ伯爵が有名ですが、今では スティーブン・キングの『呪われた町』の方が名が知られているかもしれません。

 

 

本来、本書の続編を書く予定はあったのだと作者は述べられています。

それが十七年後に『妖の掟』として結実し、さらにその後のシリーズの展開までも言及されています。

最終巻は一作目『妖の華』の後日談であり、近未来SFになるということなので、それまで楽しみに待ちたいと思います。

 

[投稿日]2020年09月23日  [最終更新日]2020年9月23日
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