浅田次郎

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終戦直前、帝国陸軍がマッカーサーから奪った時価二百兆円に上る財宝が極秘裏に隠匿された。それは、日本が敗戦から立ちあがるための資金となるはずだった。そして五十年後、一人の老人が遺した手帳がその真相を明らかにしようとしていた―。終戦時の勤労動員の女生徒たち、密命を帯びた軍人など、財宝に関わり、それを守るために生き、死んでいった人々の姿を描いた力作。心地よい感動があなたを包む。(「BOOK」データベースより)

 

太平洋戦争終戦時の財宝の行方をめぐる人々の行いを描く感動の長編小説です。

 

本書『日輪の遺産』は1993年出版の作品であって著者のごく初期の作品であり、残念ながら浅田次郎の作品にしては完成度が今一つと感じました。

本書は本書として面白いのですが、『壬生義士伝』を始めとする新選組三部作や『天切り松-闇がたりシリーズ』といった素晴らしい作品を読んだ後ではどうしてもこの著者に対する要求が高くなってしまい、一般読者の勝手な要求としてそう思ってしまいました。

 

丹羽明人は競馬場で知り合った老人の最後を看取り、お礼にと一冊の手帳を渡される。

ボランティアの海老沢と共に老人の大家だという資産家の金原と老人についての話をするうちに、手帳に書かれているとんでも無い話が全くの虚構でも無さそうなことに気づくのだった。

 

終戦時の真柴司郎少佐、小泉重雄中尉、望月庄造曹長の命令に従いマッカーサーの財宝を隠そうとする三人の行動と、老人の手帳に記された事実に振り回される現代の丹羽明人、海老沢、金原という三人の姿とが交互に語られます。

頁が進むにつれ、終戦時と現代との関連が次第に明かされていく仕組みはいかにも浅田次郎ではあります。

 

ただ、例えば終戦時の真柴少佐たちが財宝の隠匿作業の手伝いに少女たちを使う理由が、秘密を最小限のものとするためと今一つ分かりにくい理由だったり、クライマックスでのマッカーサーの行動が不自然だったり、と今の浅田次郎の小説では無いであろう不自然さが少なからずあるのです。

著者は「大勢の登場人物が使いこなせず、視点が不安定となり、ときにはあいまいにもなっている。センテンスの配分が悪く、文末の処理も稚拙である。」とがあとがきで書いておられます。

「視点の曖昧さ」等のために物語として消化不足と感じるのでしょうか。改めて現在の浅田次郎の力量で書かれた本作品を読んでみたいと思いました。

 

色々ケチをつけた上で変かもしれませんが、それでもやはり浅田次郎の物語です。今の浅田次郎の水準に比して完成度が低いというだけであり、面白い小説ではあります。

[投稿日]2014年12月30日  [最終更新日]2018年12月9日
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