浅田次郎

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双葉社

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奥多摩の御嶽山にある神官屋敷で物語られる、怪談めいた夜語り。著者が少年の頃、伯母から聞かされたのは、怖いけれど惹きこまれる話ばかりだった。切なさにほろりと涙が出る浅田版遠野物語ともいうべき御嶽山物語(「BOOK」データベースより)

 

柳田国男の『遠野物語』を思わせる、浅田次郎の描き出す怪異譚で構成される短編集です。本書のタイトルは「かみいますやまの・・・」と読むそうです。

 


 

神上がりましし伯父
作者と思われる語り手(主人公)自身の体験。普通の人には見えないものが見える霊力を持った自分が、自分に会いに来た伯父の姿を見て、伯父の死を知る。

兵隊宿
主人公の祖母イツの語る、雪の降る夜に行方不明者を探していた砲兵隊の物語。

天狗の嫁
主人公が語る、主人公の母親のすぐ上の姉である少女のように小柄なカムロ伯母の、嵐(伊勢湾台風)の夜などの思い出


主人公の母親とは親子ほどにも歳が離れていたちとせ伯母が寝物語に語る、夏の新月の晩にやってきた喜善坊と名乗る修験者の話。

見知らぬ少年
主人公自身が出会った、かしこと名乗る一人の少年とのひと夏の物語。

宵宮の客
ちとせ伯母が寝物語に語る、一夜の宿を求めてやってきた一人の男の物語。

天井裏の春子
ちとせ伯母が寝物語に語る、狐が憑いた、仮に春子と呼ばれたモダンガールの物語。

 

どの物語も、これまでに私が読んできた浅田次郎の作品とは毛色が異なった作品集でした。

 

先に『遠野物語』のようだとは書きましたが、私は遠野物語を読んだことはなく、本書「あとがき」などで記されている言葉をもとに分かりやすいかと思い書いたものです。つまりは、不思議物語集だということです。

 

 

本書の舞台は東京都の西部にある「御嶽山(みたけさん)」山頂の武蔵御嶽神社です。高名な木曽の「御嶽」との混同を避け、「ミタケ」と読ませたのだろう、と本文中にありました。

この神社が作者浅田次郎の母方の実家であったそうで、本書「あとがき」での作者の言葉によれば、浅田次郎の作品である『あやし うらめし あなかなし』に収録された「赤い絆」と「お狐様の話」のモチーフとなった出来事はすべてこの神社を舞台にした本当にあったこと、だといいます。

 

 

本書は、それらの物語と同列の短編ということになります。

聞き語りの形式で書かれている「あとがき」で、聞き手東雅夫氏の「ストーリーは、どの程度脚色されたのでしょうか」という質問に対し、著者は、「神上がりましし伯父」での白黒二頭のお狗様を目撃するエピソードは実体験だと言っていますし、他の話にしても、そうした話が事実として語り継がれていた、と述べられています。

 

この「あとがき」の最後で、作者が「余分なことは一行も書くまいと心に決めていました。」とあったのですが、この文言が読み手として気になりました。

つまりは、実際に読んでみて、いつも通りの浅田次郎のうまい文章だとの感想は持ったものの、「余分なこと」の有無などは何も感じられなかったのであり、読み手として作者のその姿勢は何も感じなかったのです。

 

また、「具体的には、どのようにすれば最小限の文章の中に、大きな物語を入れられるのかを常に考えていました」と言われているのですが、その点でも感じるところはありませんでした。

結局、読み手としての力量の無さを指摘されただけのような気がしたものです。

 

短い定型詩が文学の主流であり続けたのが日本文学の特徴だという作者は、日本を表現するにはそれと同じような気持ちで書かないといけないというのです。

そんな読み方のできていない私にはかなり耳の痛い「あとがき」でした。

 

本書の内容に関しては、内容がホラーであり、これまでの浅田作品にみられるユーモアに満ちた文章は影をひそめ、神域の厳かな雰囲気を醸し出す、落ち着いた文章で構成されています。

ただ、「ホラー」と言い切っていいものかは疑問もあります。怪異譚ではありますが、怖がらせるという話ではなく、神域で起きる通常ではありえない話ということに過ぎないからです。

また、各短編の話の主体が、主人公自身の経験であったり、伯母が聞いた話であったりと、若干混乱しそうになったりもしますが、丁寧に読みさえすれば何の問題もありません。

 

浅田次郎の母方の実家で実際に起きたという、話を集めたものともいえます。どこか自身の幼いころの話にも通じる懐かしさもある短編集でした。

[投稿日]2019年04月20日  [最終更新日]2019年4月20日
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奥多摩の御嶽山にある神官屋敷で物語られる、怪談めいた夜語り。著者が少年の頃、伯母から聞かされたのは、怖いけれど惹きこまれる話ばかりだった。切なさにほろりと涙が出る浅田版遠野物語ならぬ御嶽物語。

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