山崎 豊子

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文庫

新潮社

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私の本棚に「沈黙のファイル」という本があります。共同通信社社会部が瀬島龍三元大本営参謀に焦点を当てたルポルタージュです。ここに描かれている瀬島龍三元大本営参謀が本書「不毛地帯」の主人公壱岐正のモデルだと言われています。

本書の前半ではシベリア抑留のことが書かれていますが、私たち戦争を知らない世代にとっては想像すらできない過酷な状況です。色々な場面でこのシベリア抑留について書かれ、映像化されているのを目にしますが、この「不毛地帯」の描写ほど詳細に語られている小説は、私は読んだことはありません。

その抑留時代を経て、壱岐は参謀としての経験を買われ商社に勤めます。そして、自衛隊の戦闘機選定に関わりロッキード事件を思わせる仕事を成し遂げるのです。その後、自動車、石油と重要品目に関わり世界を駆け巡ることになります。

会社ひいては国に対する奉公と、死んでいった仲間に対する思いとの間で煩悶する主人公がいるのですが、そうした思いは日常の経済活動の中で押しつぶされていきます。途中、かつての軍人仲間の一人が戦没者の母体を弔うために比叡山延暦寺での千日回峰行を行う場面がありますが、ここでの会話と千日回峰行の描写は特に印象的でした。

30年以上も前に読んだ本なのですが映画の記憶とも合わせ、未だに鮮烈な印象を残している本です。是非読むべき本です。

[投稿日]2015年04月21日  [最終更新日]2015年4月21日
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