『エムエス 継続捜査ゼミ2』とは
本書『エムエス 継続捜査ゼミ2』は『継続捜査ゼミシリーズ』の第二弾で、文庫本で416頁の長さの、長編の推理小説です。
ゼミの学生に推理をさせるというユニークな形式をとっている作品ですが、ミステリーとしての面白さは今一つという印象です。
『エムエス 継続捜査ゼミ2』の簡単なあらすじ
学園祭でのミスコン反対運動を推進する女子学生・高樹晶がキャンパスで襲撃された。警察は、直前まで高樹と議論をしていた小早川教授を傷害容疑で任意同行、厳しい取り調べを行う。教授を救うため「継続捜査ゼミ」の5人が、暴走する警察を相手に戦いを開始!女子大を舞台にした人気シリーズ第2弾!!(「BOOK」データベースより)
小早川一郎教授の刑事政策演習ゼミ、通称「継続捜査ゼミ」では、冤罪の危険についての話から、三女祭でのミスコンへの反対運動へと話の流れが移っていた。
その後、小早川の研究室にミスコン反対派のリーダーの高樹晶という女子学生が訪ねてきて、ミスコンについての小早川の話を聞きたいといってきた。
ところが、その高樹晶が小早川の研究室から退出してすぐに何者かに襲われてしまう。
駆け付けた小早川が近くにいた警官と少々もめると、その後すぐに強行犯係長の大滝という男が高樹晶に対する傷害容疑で任意同行を求めてきたのだった。
『エムエス 継続捜査ゼミ2』の感想
今野敏の小説の魅力の第一は、まずはその読みやすさにあると思われます。
それは、難しい言葉は使わずに誰にでもわかる言葉で描いてあることや、会話文や改行を多用していることから感覚的に頭に入ってきやすいということがあります。
そのうえで、これはシリーズの第一巻である『継続捜査ゼミ』でも同じことを書いたのですが、作品の内容が世の中の事柄を単純化してあって、実に理解しやすいのです。
例えば、またまた一巻目と同じ例えで恐縮ですが、大人気シリーズの『隠蔽捜査シリーズ』では、主人公の竜崎は変人と目されている男ですが、その行動原理は単純で、単に自分が合理的と判断する事柄を行っているにすぎません。
そうした単純化の仕方がうまく、物語の展開が素直に頭に入ってくると思われます。
本書の場合もその例に漏れません。本書のストリー自体は単純です。
ところが、本書『エムエス 継続捜査ゼミ2』の場合単純化が行き過ぎているとしか思えない展開でした。
未解決事件を取り上げている小早川教授のゼミの今回のテーマは「冤罪」ということです。それはつまりは本書のテーマにも連なってきていて、その冤罪事件に小早川が巻き込まれることになります。
その巻き込まれ方が極端すぎるのです。
例えば、いち早く現場に駆け付けた小早川が現場にいた一人の警察官ともめます。
そして、小早川に反感を抱いたその警察官を優秀と信じ、かつ目をかけていた大滝強行犯係長がその警察官から小早川が怪しいという話を聞き、小早川を被疑者として決めつける流れになっています。
小早川が本書『エムエス 継続捜査ゼミ2』のテーマとなっている冤罪の対象になりかけるという流れはいいのですが、あまりにも早計に過ぎると思われる展開です。
このような印象はほかの箇所でもあり、本書に限って言えば少々単純化のしすぎだと言わざるを得ません。
とはいえ、そうした瑕疵は見られてもやはり今野敏の小説は面白いと言わざるを得ないところはファンである読者の弱みとしか言えないのでしょう。