『獅子吼』とは
本書『獅子吼』は、2016年1月に文藝春秋から刊行され、2018年12月に文春文庫から293頁の文庫として出版された短編小説集です。
『獅子吼』の簡単なあらすじ
「けっして瞋るな。瞋れば命を失う」父の訓えを守り、檻の中で運命を受け入れて暮らす彼が、太平洋戦争下の過酷に苦しむ人間たちを前に掟を破る時ーそれぞれの哀切と尊厳が胸に迫る表題作ほか、昭和四十年の日帰りスキー旅行を描く「帰り道」、学徒将校が満洲で奇妙な軍人に出会う「流離人」など華と涙の王道六編。(「BOOK」データベースより)
『獅子吼』について
本書『獅子吼』は、私にとっては作者の意図が今一つ掴めない作品集でもありました。
「獅子吼」
戦争の無意味さを忍ばせた作品で、誰もが知っている『かわいそうなぞう』という童話のもとにもなった、上野動物園での象の花子の殺処分の話をもとに練られてであろう作品です。
声高に反戦をうたいあげるのではなく、この作品のように非日常の世界を作り上げながら、人間ドラマと絡めた上での動物目線の話は浅田次郎ならではの物語です。
「帰り道」
最後の一行に至るまでの話の運び方のうまさにつきます。ただ、物語の意図はよく分かりませんでした。当時の時代を描いた、というだけのことでしょうか。それとも最後の一行のための物語でしょうか。
「九泉閣へようこそ」
恋愛模様のようでいて、結局は九泉閣という「宿」目線になったりと、男女の物語のようで、そうではないような、よく理解できない物語でした。
「うきよご」
昭和という時代でも、またかつての渋谷の匂いでもない、作者と同じ世代の私にも感じられない独特の雰囲気を持った、不思議な小説です。
かつて読んだこの作者の『霧笛荘夜話』の雰囲気を思い出していました。この作品も時代や場所を感じさせない物語であり、ファンタジックな雰囲気を持っていました。
「流離人(さすりびと)」
戦争に対する作者の思いがわりとはっきりと表れているファンタジックな物語で、かなり好きな物語でした。
「ブルー・ブルー・スカイ」
この作品も、作者の意図が分かりにくいお話でした。
どの物語もまぎれもなく浅田次郎の語り口です。しかしながら、若干理解しにくい作品もありました。
ただ、表題作の「獅子吼」や「流離人(さすりびと)」などはまさに私の好きな浅田次郎の作品でした。
