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有川 浩 雑感
この作家の作品には悪人がいません。根底に相手、若しくは仲間に対する信頼があり、対立していて厳しい言葉を投げかける関係でも、主人公が困難に直面した場面など、場合によっては救いの手が差し伸べられたりします。
作品自体がきちんとした状況説明が為され、登場人物の性格にメリハリがつけられていて、全体の構成がしっかりとしているので、普通の文章で日常を語っていても場面が理解しやすいのだと思います。ですから、実に読みやすいのです。
有川浩は「ライトノベル作家」だそうです。これはご本人もそう公言しているので間違いのないところなのでしょう。ライトノベルとは言ってもその定義は定かでないようで、概して対象読者が中・高校生だということは言えるのでしょうか。そのためか、人物造形が浅かったりして物語自体にも深みを欠く、と感じられる作品もあるようです。その点でも有川浩の作品は概ね安心でき、そう考えればこの有川浩という作家の読みやすさも分かります。
浅田次郎が五代目中村勘九郎との対談の中で、歌舞伎も小説も「学問の延長上に置いて」はいけない、「庶民の娯楽」であるべき、ということを言われています。その流れで行くとライトノベルという何となく格下に見られがちなジャンルであっても、逆に若者への娯楽の提供という意味では先頭を走っているのかもしれません。実際、面白い作品は沢山あるのですから。
「図書館戦争」は「本の雑誌」が選ぶ2006年上半期エンターテインメントで第一位、2007年度本屋大賞で第五位、「図書館戦争」シリーズで第39回星雲賞日本長編作品部門を受賞など、その他の作品でも数々の賞を受賞しておられます。
[投稿日] 2014年12月29日 [最終更新日] 2015年4月13日
おすすめの小説
おすすめのユーモア作家
スラップスティックコメディからほのぼのとしたユーモアまで色々あります。中には未読のものもありますが、大半は実際に読み終えた作品です。
- 浅田 次郎
- 「プリズンホテル 」 関東桜会木戸組の初代組長木戸仲蔵がオーナーであるリゾートホテルは、スタッフもまたお客も癖のある人たちが集うホテルだった。木戸仲蔵の甥っ子である木戸孝之介は愛人の田村清子と共にそのホテルの客となり、ドタバタ劇が繰り広げられるのだ。
- 筒井 康隆
- 長編の「馬の首風雲録 」は馬の首と呼ばれる暗雲星雲に住む犬に似た異星人のハチャメチャ物語だし、短編集「日本列島七曲り 」などはドタバタ劇などという言葉では語りつくされない、驚天動地の物語です。作品数も多く筒井作品は一言では語れません。
- 奥田 英朗
- 「伊良部シリーズ」は「イン・ザ・プール 」から始まる、伊良部総合病院の地下にある神経科を訪れる人々と、彼らを診る医師を描いた短編集です。私はこの人の作品は未読ですが、ちょっと調べると必ずこの人の名前が出てきます。
- 荻原 浩
- ユーモア小説で調べると必ず名前の挙がる作家さんです。水谷豊主演で映画化された「愛しの座敷わらし 」はこの人の作品です。ユーモア小説とは離れますが、渡辺謙主演で映画化された若年性アルツハイマーを描いた「明日の記憶 」もそうでした。
- 遠藤 周作
- 「 」 「沈黙」や「海と毒薬」などの人間を徹底的に見つめた純文学作品もありますが、ユーモア小説の分野でもまた多数の作品があります。「ただいま浪人」のみ手元に残っており、他は散逸してしまいました。
- 田辺 聖子
- この作家も多作で、どの作品を読んだのか、今では覚えていません。ただ、日常の暮らしの中での出来事をユーモアたっぷりに描き出し、ほのぼのとした読後感があったことを覚えています。
- 北 杜夫
- 「どくとるマンボウ青春記 」はマンボウシリーズの一作目です。小説ではありませんが若かりし北杜夫のエネルギーに満ち溢れた青春記です。
- 畑 正憲
- 「ムツゴロウの青春記 」は、ムツゴロウ先生のエッセイです。これまた小説ではありませんが抱腹絶倒のムツゴロウさんの青春記です。今もって青春のバイブルと言っても過言ではないと思います。必読書です。
軽く読める作家一覧
心地よい読後感を持つ、軽く読める現代小説作家さんのごく一部です。
- 赤川 次郎
- 何といっても「三毛猫ホームズシリーズ 」は外せません。1978年4月に光文社カッパノベルスから「三毛猫ホームズの推理」が出版されて以来、現在もなお続いている超人気シリーズです。推理小説の面白さは勿論のこと、探偵役が猫というユニークな設定で、なお且つ非常に読みやすいのです。
- 高田 郁
- 「ふるさと銀河線 軌道春秋 」は、漫画の原作として発表され、人気を博した作品を小説化した短編集です。下を向いている登場人物たちに、明日への希望を示す物語集です。
- 夏川 草介
- 「神様のカルテ 」は信州のとある病院に勤務する内科医栗原一止(いちと)の物語です。読みやすい作品ですが、命を見つめる作者の視点は優しさに満ちています。
- 金城 一紀
- 「対話篇 」は人との対話を、「映画篇 」は映画をテーマとして人との繋がりを描き出しています。読んだ後暖かな気持ちにさせてくれます。
- 朱川 湊人
- 「かたみ歌 」は、ホラーテイストは入ってますが、人間味のこもった、どことなくノスタルジーを感じさせる短編集です。