浅田次郎

イラスト1
Pocket

文庫

集英社

写真は Amazon にリンクしています。

楽天Booksは 楽天Books へ。


「鉄道員(ぽっぽや)」「ラブ・レター」「悪魔」「角筈にて」「伽羅」「うらぼんえ」「ろくでなしのサンタ」「オリヲン座からの招待状」の八編からなる、決して明るくはない短編集です。というよりも、どちらかというと暗い、重いとさえ感じてしまいます。しかし、読後に人の様々の「想い」について、改めて考えさせられ、自分の来し方を振り返ってしまう、そんな短編集です。

本書の基底には作者本人の経験譚があるらしく、私小説とまではいかなくても、それに近いものがあるようです。どの作品も素晴らしいのですが、個人的には「オリヲン座からの招待状」「ラブ・レター」「角筈にて」等に惹かれました。

「ラブ・レター」は、最初は余りにも筋立てが出来過ぎていてどこか作り物めいて感じたのです。しかし、本当は小説外の情報で作品のイメージが左右されるというのは読み手としては良くないのでしょうが、あとがきで「身近で実際に起こった出来事」だったとあるのを読んで、印象が変わった作品です。

「角筈にて」は、不遇の少年期を過ごした男が自らを捨てた亡き父を思い、街角に居る筈の無い父親の姿を見る、という話なのですが、この筋立ては男ならずとも琴線に触れるものがあると思います。特に解説の北上次郎氏の言うように、還暦を過ぎている私の年代から来る思いもあると思われます。

表題でもある「鉄道員(ぽっぽや)」は、如何にも浅田作品らしいファンタジックな要素もある人間ドラマでした。今思うと先に見ていた映画は少々原作のイメージとは異なるものであったようです。あの映画はやはり健さんあってのものだと思います。

「オリヲン座からの招待状」の二人は「地下鉄に乗って」の小沼佐吉とお時にもどこか似ています。この二人の描写が上手いですね。

本書は浅田次郎の処女短編集だそうですが、浅田次郎という作家は当初からきれいな文章を書かれている人なのだと、改めて思わされる作品集です。どの作品も、ゆっくりと心の奥に染み入ってくるようで、素晴らしいです。

[投稿日]2015年03月22日  [最終更新日]2015年3月22日
Pocket

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です