浅田次郎

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新潮社

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「あじさい心中」 リストラにあった北村は、ふと出かけた地方競馬にも負け、ふと立ち寄ったとある温泉町で、盛りを過ぎた踊り子と出会い一夜を過ごしてしまう。

踊り子が自分語りをする場面は、浅田次郎らしい哀切に満ちた場面です。会ったばかりの男と女の交情の結末は思わずうなってしまいました。

「死に賃」 死の苦痛と恐怖から免れるためにはいくら払うか、と聞いてきた長年の友人の小柳が、真夜中の心不全で逝った。その小柳から貰った、安楽死を約束するというダイレクトメールが大内惣次の手にあった。死期を感じた大内。しかしそのサービスは摘発され、代わりに身近にいた秘書の松永の存在に気づく。

金儲けのために一生懸命に働いてきた主人公の、死の床での話は夢か現実か。主人公に尽くした秘書の美しさがファンタジーの中に光る好編です。

「奈落」 一人の男が何故か未到着のエレベーターの扉が開いたため、そのまま乗りこみ落ちて死んだ。その通夜の後、男の属していた会社の社員たちは男についていろいろ語るのだった。

死んだ男の会社の社員らや役付き、社長や会長達の、死んだ男をめぐるそれぞれの思惑を絡めながらの会話のたびに、隠された秘密が少しずつ明かされていきます。全編会話文だけの、サラリーマンの悲哀も漂う、少々考えさせられる短編です。

「佳人」 お嫁さん紹介を生きがいとしている母に、完全無欠な男と言える吉岡英樹という部下を紹介してみる気になった。そして、吉岡を呼び母に会わせたのだが・・・。

ショートといっても良いくらいの、十五頁ほどしかない短編です。しかし、ショートだからこその意外なオチが待っていました。

「ひなまつり」 もうじき中学生になる弥生が一人で留守番をしていると、前に隣の部屋に住んでいた吉井さんが訪ねてきた。こんな人がお父さんだったらと思うけれど、ダメなんだろう。でも、・・・。

弥生の視点で語られる本作品は、昭和の匂いが強く漂う小品です。もうすぐ中学生なろうとする女の子の一途な思いを描いてあります。

「薔薇盗人」 豪華客船の船長である父親に向けての小学六年生の男の子の、自分の近況を報告している手紙という形式で進みます。

すべてが無垢な子供の視点で、客観的に記されています。そこには、母親が家庭訪問に来た先生と長いこと話しこんでいたりする姿も報告してあるのです。

どの物語も人と人とのつながりについて、幾種類もの見え方を示してくれている作品集です。特に冒頭の「あじさい心中」が浅田次郎らしさが一番出ている作品に思え、心に残りました。

[投稿日]2017年01月13日  [最終更新日]2017年1月13日
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