大沢 在昌

イラスト1
Pocket

写真は Amazon にリンクしています。

楽天Booksは 感傷の街角 (角川文庫) へ。


佐久間公シリーズ(2019年06月29日現在)

  1. 感傷の街角
  2. 標的走路
  3. 漂泊の街角
  1. 追跡者の血統
  2. 雪蛍
  3. 心では重すぎる

 

本書の主人公は、とある法律事務所に勤務する佐久間公という名の調査員です。

そして、シリーズの第一作である短編集が『感傷の街角』であり、著者である大沢在昌のデビュー作であって、この作品で第一回小説推理新人賞を受賞しました。

デビュー作だからでしょう、この作品での主人公は実にキザです。普通、ハードボイルドの主人公は洒落た言葉を発し、それなりの腕っぷしを持っていたりもするのですが、この主人公の言葉はどこか浮いています。

 

本シリーズを読み始めて最初に思ったのが主人公の台詞の軽さ、ですが、その次に思ったのが、調査部を自分の事務所で持つような法律事務所が東京にはあるのだろうかということです。

たしかに法律事務所では、離婚事件などで私立探偵事務所に調査を依頼することはあります。しかし、調査員を自前で持つような法律事務所など、考えられなかったのです。

この点に関しては第二巻の『漂泊の街角』の北原清氏のあとがきに、次のようなことが書いてありました。

主人公が属する事務所は、「早川法律事務所は巨大な法律事務機構である。擁している弁護士は“社長”の早川弁護士を含めると十数人に達する。機構の中には調査課が二つあり、下請け興信所を必要としない。一課は証拠収集、二課は、失踪人調査をその業務としている。」のだそうです。

そして、第一回小説推理新人賞選考会での、生島治郎や海渡英祐、藤原審爾の三人の選考委員の、こんな巨大な機構を持った弁護士事務所は存在しないのではないかという指摘に対し、著者の大沢在昌は「あります」と言い切り、そのまま受賞するに至った、というエピソードを記してありました。

著者が言い切るのですから存在するのでしょう。この点は調べればすぐにでも分かることでしょうから、そんなに大きな問題点ではなかったのかもしれません。

 

主人公のキザさという点も、読みようによっては新人らしく、決して欠点とまでは言えないともいえ、また法律事務所の規模という点もあくまで小説として受け入れることができないわけではありません。

また、たまに登場する公の友人の沢辺の存在も見逃せません。これは、例えば 石田衣良の『池袋ウエストゲートパークシリーズ』での真島誠と安藤崇の関係と同様であり、また 東直己の『ススキノ探偵シリーズ』の俺と高田のようでもあります。

 

 

出版年月から見て本シリーズが一番古いことを考えると、こうした関係は「バディもの」という言葉があるように、一つのパターンとしてあるのでしょう。

いずれにしても、沢辺の存在は公の存在に暴力的な側面での助けがあること、また勤務先の存在は、警察とのつながりという一面も有し、法律的にも正当性を持つ存在としての性格を持ちます。

その点では私立探偵ものと警察ものとの中間的な位置づけを持つとも言えそうです。

いずれにしても、大沢在昌という作家の成長すらも見える、読みごたえのあるシリーズだと言えそうです。

[投稿日]2019年07月04日  [最終更新日]2019年7月5日
Pocket

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です