東 直己 雑感
『東直己』のプロフィール
1956年、北海道札幌市生まれ。北海道大学文学部西洋哲学科中退。92年、『探偵はバーにいる』で作家デビュー。以後、「俺」を探偵役にしたススキノ探偵シリーズ、探偵畝原シリーズ、榊原シリーズなどの作品を発表。2001年、『残光』で第54回日本推理作家協会賞を受賞。2作目の『バーにかかってきた電話』を原作とした映画「探偵はBARにいる」(11年公開)は、初日から2日で興行収入1億7000万円、観客動員数12万人を突破。すぐに続編の製作が決まる大ヒットとなった。現在、続編の「探偵はBARにいる2ススキノ大交差点」が公開中。
『東直己』について
ずっとこの東直己という作家の作品を読んだことがありませんでした。正確に言えば、アンソロジーの中の一作として短編を読んだことはあったのだけれど、記憶に残っていなかったのです。
ところが、大泉洋主演の映画「探偵はBARにいる」がきっかけで東直己を知ったのですが、原作を読んだところ、これが非常に面白い。久しぶりに物語世界に引き込まれた作家に出会いました。
作品単品ではこれは良いと思える作品はあったのですが、作家として面白いと思えたのは久しぶりのことです。
ハードボイルド作品ですが、少なくともシリーズ作品は北方謙三や志水辰夫などの低いトーンの男たちの世界と比べると現実的です。
東直己の『ススキノ探偵シリーズ』の主人公はひたすら能天気だし、『探偵・畝原シリーズ』の主人公は生活を背負って生きています。
『榊原健三シリーズ』でも、この作家自身がそうなのか、文章若しくは文体がそうなのか、決してトーンが低いとは言えなさそうです。
また、これらの三作品について言えば各シリーズがその舞台を同じくしていて、夫々の登場人物が他のシリーズに出てきたりと、それもまたこの作品群の魅力の一つだと思います。
特に「ススキノ探偵」の「俺」の饒舌さは群を抜いています。少々冗長な場面が無いこともありませんが、それでも物語の雰囲気を盛り上げてくれます。
ちなみに『ススキノ探偵シリーズ』の映画化作品は、上掲の「探偵はBARにいる」から「探偵はBARにいる3」まで三作品が作成されています。映画版もそれだけ人気があるということでしょう。
残念ながら東直己作品はここしばらく出版されていないようです。心待ちにしているのですが、残念です。