『矢能シリーズ』とは
元ヤクザの矢能政男という男の探偵稼業の様子を描いたハードボイルドミステリー小説です。
矢能という男のキャラクターにもよるのでしょうが、小気味のいい文体で読みやすいこともあり、好きなシリーズの一つになっています。
『矢能シリーズ』の作品
『矢能シリーズ』について
この『矢能シリーズ』は、普通の探偵小説とは異なり、本格派の推理小説でも、クールなハードボイルド小説でもありません。
元笹健組にいたという矢能の前身に応じ、もっぱらヤクザを顧客とする、いわばヤクザ御用達の探偵なのです。
ただ、矢能のもとには栞という小学生の女の子がいますが、この栞という少女の存在が本『矢能シリーズ』の魅力の一つとしてあると思われます
また、後には栞の勧める美容室の女性もシリーズの雰囲気を和らげる役目を果たしていそうです。
この栞や美容室の女性の来歴は簡単ではありますが、シリーズ第一弾の『水の中の犬』に述べられています。
本『矢能シリーズ』は、そもそも『矢能シリーズ』というシリーズ名で通るものかどうかも実はよく分かりません。とはいえ、ネット上では『矢能シリーズ』で通っているようですからいいのでしょう。
先にシリーズ第一弾は『水の中の犬』と書きましたが、実はシリーズ第一弾はと問われるとそれがはっきりとはしません。
矢能という男が最初に登場するのは、確かに『水の中の犬』という作品です。
このときはまだ菱口組若頭補佐笹健組組長の笹川健三のボディーガードのようにして笹川の側にいました。その組内の地位は不明ですが貫禄十分の笹健組の組員であったと思っていいのでしょう。
しかし、『水の中の犬』の主人公は矢能政男ではなく、「私」として登場する探偵です。
本シリーズの『矢能シリーズ』というネーミングからも分かる通り、本シリーズの主人公は矢能政男という男だとするならば、この『水の中の犬』は『矢能シリーズ』の前日譚ともいうべき位置にあります。
この矢能政男がヤクザをやめ、『水の中の犬』の主人公の「探偵」の後をついで探偵となるのです。
その辺の詳しい事情は『水の中の犬』を読んでもらうしかありません。
シリーズの主人公と言える矢能政男が本格的に活躍するのは、ですから第二弾の『アウト&アウト』からです。
新米探偵が元ヤクザという経歴を生かして様々な依頼を処理していくさまが描かれています。
矢能にはどうにも似合わない稼業だと人は言いますが、むかし取った杵柄で業界には顔が通っていて、まんざらでもなさそうです。
第一弾がダークな雰囲気のハードボイルドミステリーだとするならば、、第二弾以降は若干コミカルなニュアンスを抱えるハードボイルドエンターテイメント小説です。
さらには、第五弾ではもうハードボイルド小説と断言できると思います。それだけ、矢能という探偵の人物像、栞との関係性が確立してきていると思うのです。
まだまだこれから続いていくシリーズでしょう。
この『矢能シリーズ』は、私にとって続巻が楽しみなシリーズの一つなのです。