『俺はエージェント』とは
本書『俺はエージェント』は2017年12月に小学館からハードカバーで刊行され、2021年1月に小学館文庫から656頁の文庫として出版された、長編のエンターテイメント小説です。
気楽に読めるコミカルなスパイもので、文庫本で651頁の長編のエンターテイメント小説です。
『俺はエージェント』の簡単なあらすじ
下町の居酒屋にかかってきた一本の電話ー。二十三年ぶりにオメガ・エージェントの極秘ミッション「コベナント」が発動され、スパイ小説好きの俺は、元凄腕エージェントの白川老人と行動を共にするはめになる。敵対するアルファ・エージェントの殺し屋たちが次々に俺たちに襲いかかる。だが、何かがおかしい。裏切り者は誰か?誰が味方で誰が敵なのか、誰にもわからない。そして、裏切られた裏切り者とは…!?年齢差四十歳以上の“迷コンビ”が、逃げて、逃げて、巨悪の陰謀を追いつめていくサスペンス巨編。(「BOOK」データベースより)
スパイ小説を読み、エージェントにあこがれる俺、村井は、行きつけの居酒屋で親しくなった白川という爺さんのスパイ活動に巻き込まれ、現実にあこがれのスパイ活動をすることになる。
しかし、その実態は裏切りに継ぐ裏切りで、誰を信頼していいのか、敵味方が全く分からない世界だった。
『俺はエージェント』の感想
本書『俺はエージェント』は、作者大沢在昌の『らんぼう』などと同様の、コメディタッチの物語です。
ただ、その対象となる世界がスパイの世界なのです。
行きつけの居酒屋で知り合った老人が凄腕のスパイであり、その居酒屋のおばさんが敵対する組織の監視員であったり、そのおばさんは問答無用で討ち殺されてしまったりと話は冒頭から荒唐無稽に展開していきます。
でありながら、インテリジェンスの世界をそれなりにリアルに描いてあったりと、アクション系やインテリジェンスの世界を舞台にした作品を数多く書かれてきたstrong>大沢在昌という作者の作品らしい仕上がりになっています。
面白さの一つに、登場してくる人物がどこまでが信用できる相手であるのか、まったく不明なことがあるでしょう。古い付き合いだからと安心していたらすぐに裏切られます。
ついには読者まで裏切られ、この物語は意外な方向へと進むのです。
主人公はスパイ小説が好きという設定ですが、本書冒頭で主人公が読んでいる『エージェント・ハリー』シリーズというスパイアクションは知りません。実在する作品なのかも不明です。
でも、すぐそのあとに書いてあるイアン・フレミングの『007シリーズ』や『0011ナポレオン・ソロ』『ジョン・ドレイク』などは現実に存在した作品ですし、ディーン・マーチンの『部隊』シリーズも同様です。
これらの作品はほとんどが映像化されていて、私も『ジョン・ドレイク』以外はすべて子供のころに見ています。007シリーズは今でも続いているのですから凄いものです。
そうした諜報員ものの中でも『それいけスマート』のようなコメディ作品も登場してきたのですが、本作はどちらかというとそのコメディ作品に似ています。
近年の映画で言えば、ハリウッド映画の『レッド』に近いと言えるかもしれません。往年の凄腕スパイたちが昔とった杵柄でスーパーマン的な活躍を見せる、オールスター登場の作品でした。