『ススキノ探偵シリーズ』とは
札幌の薄野を舞台に、ヤクザのような風貌の便利屋である〈俺〉が持ち込まれた厄介事を解決するために、北海道大学の院生である高田という男の手を借りながら解決していくハードボイルド作品です。
時の社会を背景にしながら、独特の軽口を叩きながら活躍する姿はまさにハードボイルドであり、一気にのめり込みました。
『ススキノ探偵シリーズ』の作品
ススキノ探偵シリーズ(2025年04月13日現在)
この作家のメインのシリーズと言っても良いのではないでしょうか。それほどに、主人公の設定がいいのです。
決してタフではなく、スタイリッシュでもない。携帯電話は使わなかったり、シャワートイレで無ければ用を足せなかったり、妙なこだわりを持った男です。
名前は明かされずに「俺」という一人称で通す主人公は能天気だけど愛すべき男であり、その主人公を取り巻く登場人物がまた魅力的です。
空手の達人で後に主人公の腕力担当とも言えそうな高田、主人公の喧嘩相手であったやくざの組長桐原、その右腕の相田等々きりがありません。
主人公の饒舌さも魅力の一つでしょう。ロバート・B・パーカーのスペンサーのように軽口ばかり叩いています。
そういえば、スペンサーにはホークというこわもての相棒がいますが、「俺」にも高田という空手の達人がいます。
主人公の名前は明かされていません。他のシリーズに出てくるときは「便利屋」と呼ばれています
蛇足ですが、名前を明かしていない探偵といえば、ビル・プロンジーニ「名無しの探偵」がおり、日本では三好徹の「天使」シリーズの主人公がいます。
また、本『ススキノ探偵シリーズ』は映画化されており、現時点(2018年10月)で「探偵はBARにいる3」まで三作品が作成されています。映画版もそれだけ人気があるということでしょう。
ただ、残念ながらその後は全く本シリーズの映画化の話は起きないようです。残念です。
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