『テロリストのパラソル』とは
本書『テロリストのパラソル』は、1995年9月に講談社からハードカバーで刊行され、1998年7月に講談社文庫から387頁の文庫として出版された、長編のハードボイルド小説です。
1995年に第41回江戸川乱歩賞、翌1996年に第114回直木賞の両賞受賞という史上初の快挙を成し遂げているというのも納得できる作品です。
『テロリストのパラソル』の簡単なあらすじ
アル中のバーテン・島村は、ある朝いつものように新宿の公園でウイスキーを呷った。ほどなく、爆弾テロ事件が発生。全共闘運動に身を投じ指名手配された過去を持つ島村は、犠牲者の中にかつての仲間の名を見つけ、事件の真相を追うー。乱歩賞&直木賞を史上初めてダブル受賞した傑作。(「BOOK」データベースより)
『テロリストのパラソル』の感想
本書『テロリストのパラソル』は、江戸川乱歩賞と直木賞の両賞を同時に受賞するという快挙を成し遂げたハードボイルド作品です。
私がこの作者藤原伊織の作品にはまった物語でもあります。
とある昼間、新宿の中央公園で爆発が起こった。
近くで飲んでいた島村はからくも爆発には巻き込まれなかったのだが、同様の事件を起こし人死にを出した過去を持つ身であるため、その場から立ち去ってしまう。
しかし、その時自らが現場に残したウィスキーの瓶からは島村の指紋が検出され、更にはその爆発での島村の過去につながる人の死を知り、爆発事件の真相を探るべく動き始めるのだった。
本書『テロリストのパラソル』では、世に潜みつつアルコールに溺れる日々を送る主人公が、自らの過去に立ち向かうその筋立てが、多分緻密に計算されたされたであろう伏線と台詞回しとでテンポよく進みます。
適度に緊張感を持って展開する物語は、会話の巧みさとも相まって読み手を飽きさせないのです。
暴力的というわけでもなく、露骨に事件について嗅ぎまわる姿が描いているわけもありません。
しかし、文学的とも称される格調高い文章で語られるこの物語は、主人公の気の利いた台詞とも相まって読者を引きずり込んでしまうのです。
第165回直木賞の候補となった『おれたちの歌を歌え』を書いた呉勝浩は、自分なりの本書『テロリストのパラソル』を書きたかった、と書いておられました。
本書『テロリストのパラソル』を是非読んでください。面白い作品です。
ちなみに、本稿冒頭に掲げてある講談社書籍イメージはAMAZONでの本書文庫が講談社しか存在しなかったからであり、楽天BOOKSではより出版年時の新しい文春文庫版も出品してありました。また、Yahooショッピングでは両出版社共に出品してありました。