大沢 在昌

狩人シリーズ

イラスト1
Pocket

写真は Amazon にリンクしています。

楽天Booksは 砂の狩人(かりうど)(上) (幻冬舎文庫) [ 大沢在昌 ] へ。


暴力団組長の子供ばかりを狙った猟奇殺人が発生。警察庁の上層部は内部犯行説を疑い、極秘に犯人を葬ろうとした。この不条理な捜査に駆り出されたのは、かつて未成年の容疑者を射殺して警察を追われた“狂犬”と恐れられる刑事だった。(「BOOK」データベースより)
暴力団組長の子供ばかりを狙った猟奇殺人が発生。警察庁の上層部は内部犯行説を疑い、極秘に犯人を葬ろうとした。この不条理な捜査に駆り出されたのは、かつて未成年の容疑者を射殺して警察を追われた“狂犬”と恐れられる刑事だった。(「BOOK」データベースより)

本書『砂の狩人』は、狩人シリーズの第二弾です。大沢在昌の人気シリーズ『新宿鮫』と同じ香りを持つハードボイルドで、かなりの読みごたえがありました。

このシリーズ第一弾目の『北の狩人』で登場した梶雪人は、後半になりヒーロー感を失い、物語としても若干の失速感を感じたものですが、本書は最後まで濃密な空気を保ったままでした。

 

今回の主人公は、三人を殺した末に拳銃を前にしていながらも「僕、またやりますから」と言い切る未成年の連続殺人犯人を撃ち抜いた過去を持つ西野という元刑事です。

その元刑事を、警察庁刑事局捜査第一課の時岡警視正が現場に連れ戻し、現在進行している暴力団の身内を対象とする連続殺人の解決に利用しようとします。

殺された三人は咽頭部に携帯電話が挿入されているという共通点を持つのですが、問題は三人の父親がいずれも恒成会、須藤一家、禿組という指定暴力団の主流派と見られる組の代表者だということでした。

当然、犯人捜しが始まり、それぞれの組の関係者が殺されていることが知れ渡ればその矛先は外国人へと向き、つまりは中国人犯罪グループとの戦争になることを危惧した時岡は、西野を利用しようと考えたのでした。

 

基本的にヤクザであろうとものともしない強さがあって、それでいて弱者に対する優しさを持ち、自らの信じるところに従って行動する男、というのは典型的なハードボイルドに登場する男の姿です。

これは、R・チャンドラーの作り出した探偵フィリップ・マーロウによる「タフじゃなくては生きていけない。やさしくなくては、生きている資格はない」という名台詞を引き合いに出すまでもなく、今ではステレオタイプと言えるこのような設定こそが普通一般人の好む娯楽小説のパターンだと思われ、本書はまさにその定番のスタイルであると言えそうです。

 

 

ただ、その定番の物語も、シリーズを通しての佐江というマル暴刑事の魅力があってこその話であり、それに加えて本書での西野というキャラクターが参加することでより魅力的な物語になっています。

そして、そうした個々のキャラクターの魅力に加え、彼らを魅力的に動かす物語自体がよく練り上げられていることもまた魅力的な物語の前提条件ではあります。

 

魅力的ななキャラクターという観点で本書を見ると、西野という元刑事に、殺人犯人を殺害した過去を持つ男という設定自体と合わせて、自分が犯した殺人犯人の殺害について「会ったためしもない、おそらく一生会うこともない誰かを、俺はあのとき助けたかった。」という台詞を言わせることで、強烈な自負心と正義感を持ったキャラクターの性格付けを明確にしています。

佐江”という、読者がすでに知っているであろう刑事について「佐江を信用できなければ、信用できるマル暴刑事などいない」と言わせているのも同じです。
 

一方で、という男もまた魅力的です。は空手三段、ボクシングでも全日本四位までなった実力で芳正会組長工藤文一の直近のボディーガードを務め、当然素手喧嘩でも達人です。

西野が可愛がっていた娘サチは工藤の娘であり、四番目の被害者となってしまいます。西野はサチの事件があって時岡の誘いに乗ったのでした。

加えて本シリーズの真の主人公である新宿署マル暴刑事の佐江が加わり男の物語が繰り広げられるという、まさに私好みの物語となっています。

この三人の活躍に加え、中国人犯罪グループのまとめ役のという中国人や時岡の上司の氏森など、癖のある登場人物をうまく配置し。複雑なストーリーをうまくまとめ上げてあるのは大沢在昌ならではのストーリーだと思われます。

 

近年では『機龍警察』の 月村了衛の描く物語の世界感が大沢節に似たものを感じると言えます。

大沢作品と同様に良く練り上げられたストーリーと、派手なアクション、魅力的な主人公たち、と並べれば、面白いアクション小説の条件とも言えそうですが、そうした条件を兼ね備えた小説はそうは見つからないものです。

 

本書『砂の狩人』は、前作『北の狩人』よりも数段読みご和えのある作品として仕上がっていました。また、次作『黒の狩人』もまた、男くさい物語で、何よりも佐江本人が中心となって活躍する物語です。こちらもかなり読み応えのある作品です。

[投稿日]2018年07月14日  [最終更新日]2018年7月14日
Pocket

おすすめの小説

おすすめのハードボイルド小説

数多くのハードボイルド小説が出ています。その中の私が好きだった作品の一部です。
ブラディ・ドール シリーズ ( 北方 謙三 )
現代のハードボイルド小説の代表と言える作品です。とある港町N市を舞台に、酒場「ブラディ・ドール」のオーナー川中良一をめぐり、キドニーと呼ばれる弁護士の宇野や、その他ピアニスト、画家、医者、殺し屋などの男たちが各巻毎に登場し、語り部となり、物語が展開していきます。
飢えて狼 ( 志水辰夫 )
本作品も現代ハードボイルド小説の代表と言える作品でしょう。
不夜城 ( 馳 星周 )
第15回日本冒険小説協会大賞大賞や第18回吉川英治文学新人賞を受賞している作品です。中国人の勢力争いが激化している、不夜城と言われる日本一の歓楽街新宿の街もを舞台に、日本と台湾のハーフ・劉健一が一人の女にのめりこんでいく。
探偵・畝原シリーズ ( 東 直己 )
札幌を舞台にしたハードボイルド小説です。探偵の畝原の地道な活躍を描き出しています。映画化もされた、ユーモラスなススキノ探偵シリーズの方が有名かもしれませんが、このシリーズも実に味わい深いものがあります。
テロリストのパラソル ( 藤原伊織 )
世に潜みつつアルコールに溺れる日々を送る主人公が自らの過去に立ち向かうその筋立てが、多分緻密に計算されたされたであろう伏線とせりふ回しとでテンポよく進みます。適度に緊張感を持って展開する物語は、会話の巧みさとも相まって読み手を飽きさせません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です