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北方 謙三 雑感

とにかく正統派のハードボイルド作家と言えます。全体的に物語のトーンは低く、短いセンテンスでたたみかけるようなその文体は「男」を強烈に感じさせます。

私の一番好きな「ブラディ・ドール」と「約束の街」シリーズはその最たるもので、同じ世界観を持っています、と思っていたら「街」シリーズの終わりの方では両シリーズが合体してしまいました。

一方、「挑戦」シリーズのように冒険小説的な匂いを持ち、物語のトーンが低いとはいえない作品もあるのですが、それでもやはり根底は「男」を感じさせる物語に仕上がっていると言って良いのではないでしょうか。

ある時期から時代小説や歴史小説にも手を染められています。でもやはり北方節は健在です。

更には中国文学の新解釈による再構成もされています。ここでも北方節は健在なのですが、物語の底に流れていた暗いトーンは影を潜め力強さを感じさせてくれる文体になってます。「三国志」や「水滸伝」など10巻以上にわたる大作を順次発表されています。これらがまた面白く、是非読まれることをお勧めします。

北方謙三作品は作品数も多く、一概には語れません。ただ、どの作品も高水準のものばかりだ、とは言えると思います。

以下殆どの作品を読んではいるのですがとても紹介しきれませんので、私の好きな作品の中でも代表的なものを参考として挙げました。

[投稿日] 2015年03月18日  [最終更新日] 2015年7月6日
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おすすめの小説

おすすめのハードボイルド作家(日本)

以下の各作品はハードボイルドという括りが無くても、お勧めの作品群です。
志水 辰夫
一時期はハードボイルドと言えば北方 謙三か志水辰夫かとも言われました。「「飢えて狼」から始まる三部作は今でも色褪せません。
藤原 伊織
テロリストのパラソル」など、その文章は格調高く、この作家の作品はハードボイルドという絞りがなくても面白い作家の上位に来ると思います。
東 直己
「ススキノ探偵シリーズ」では、札幌はススキノを舞台に饒舌な「俺」が活躍します。
大藪 春彦
日本のハードボイルドは、この人の「野獣死すべし」から始まりました。
大沢 在昌
新宿鮫」では、キャリアの刑事が活躍します。エンタテイメントという言葉はこの人のためにあるのかもしれません。
三好 徹
天使シリーズ」は、短編の積み重ねですが、30年も前に読んだので今の時代に合うか、若干心配です。
平井 和正
ウルフガイシリーズ」は40年近くも間に読んだ本だけど、色褪せてない、と思います。

おすすめのハードボイルド作家(海外)

他にも多数の作家がいるのですが、とりあえず私が読み、印象の強かった作家だけを挙げています。また、挙げている作品はあくまで参考です。
ダシール・ハメット
サム・スペードが活躍する「マルタの鷹」から始まるシリーズは、ハードボイルドの名作中の名作です。あくまで客観的に、ときには暴力的なその文体は、この後に続く多くの作家に影響を与えました。この人を抜きにしてはハードボイルドは語れません。
レイモンド・チャンドラー
ハメットと同じく客観的描写に勤めるその文体はハードボイルドの古典です。「ロング・グッドバイ」では主人公のフィリップ・マーロウが行動し、事件の裏を探り出します。
ロバート・B・パーカー
饒舌な私立探偵スペンサーとそれを助ける黒人の大男ホークが様々な問題を時には暴力をも使って解決します。男の「誇り」を生き方で示すスペンサー、その矜持を認めつつ自らも自立する恋人のスーザン。この二人の会話もまた魅力的です。このシリーズの中でも「初秋」は少年とスペンサーの心の交流を描き必読です。
ジェイムズ・クラムリー
酔いどれの誇り」や「ダンシング・ベア」など、翻訳の妙なのかもしれませんが、その文章は文学作品のようです。
ローレンス・ブロック
八百万の死にざま」に代表されるマット・スカダー・シリーズでは、酔いどれ探偵が活躍します。

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