今野 敏

横浜みなとみらい署暴対係シリーズ

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「詐欺の報復で人を殺すなんて許すわけにはいかない」横浜・山手町の廃屋跡から二つの遺体が発見された。さらに所有者不明土地を利用した不動産詐欺事件が浮上する。背後に暴力団関与の疑いがあると判断した県警本部長の要請を受け、諸橋と城島は署を離れ、捜査に加わることになったが―。(「BOOK」データベースより)

 

『横浜みなとみらい署暴対係シリーズ』の第四弾となる長編の警察小説です。

 

端的に言えば、勿論今野敏の警察小説として普通に面白い作品です。

ただ、小説の達者な書き手が書いた小説として、ただそれだけで終わっている印象です。

本書は“ハマの用心棒”と呼ばれているマル暴の諸橋と城島の物語ですが、マル暴としての二人の個性、存在感があまり発揮されているとはいいがたい作品でした。

 

というのも、この作者の『隠蔽捜査シリーズ』や『安積班シリーズ』などの作品は、それぞれの主人公の「竜崎署長」の「安積警部補」といった主役や、彼らを支える脇役のキャラクターが明確であり、そうしたキャラクターだからこその物語だと言えると思います。

 

 

しかし、本書に限って言えば、マル暴としての二人の存在感を見せ、活躍する場面はそれほどでもありません。

確かに、本書での事案の対象は暴力団であり、二人の暴力団への聞き込みにより新たな事実が判明し、事件解明に役に立っているということはあります。でも、それはこの二人でなくても十分な情報を得ることができそうな印象が強いのです。

つまりはマル暴としての側面が明確に発揮できていると言い難いということでしょうか。

まあ、大阪からやってきた黒滝享次らと文字通り正面から喧嘩をする諸橋と城島に限って言えばその限りではなく、“ハマの用心棒”の面目躍如というところですが。

 

本書の物語などを思うと、今野敏の小説の登場人物は、本書の諸橋、城嶋にしても、行動優先のようにしていながらも、頭で考えることが下地にあり、つまりは理屈面が勝っている印象があります。

もしかしたら、近時の今野敏の小説に論理優先という印象があり、マル暴の印象が一歩引いているのかもしれません。

 

本書の内容に戻ると、主役の二人よりも、県警本部長の佐藤実という人物が気になりました。

警察官だからといって堅くある必要はなく「臨機応変、柔軟な対応」が必要だというこの本部長は、諸橋らの情報源の一つである、常磐町の神風会の神野というヤクザに興味を示したりと少々変わっています。

この本部長は今野敏の人気シリーズの一つである『マル暴甘粕シリーズ』の第二弾『『マル暴総監』』に登場する警視総監のように型破りであり、魅力的な人物です。

 

 

また、県警本部捜査二課の永田優子課長も型破りのキャリアとして描いてあり、このシリーズの憎まれ役であった笹本康平監察官とともに今後もこのシリーズの名物となりそうな気がします。

ともあれ、土地売買に絡んだ詐欺事件の延長線上に起きた殺人事件を“ハマの用心棒”の二人が解決していく物語です。少々半端な印象はあるものの、魅力的な登場人物の存在にも助けられ、今野敏の警察小説として楽しめる作品であることは間違いありません。

[投稿日]2019年04月16日  [最終更新日]2019年4月16日
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