『マル暴総監』とは
本書『マル暴総監』は『マル暴シリーズ』の第二弾で、2016年5月に刊行されて2019年8月に432頁で文庫化された、長編の警察小説です。
『マル暴総監』の簡単なあらすじ
「俺のこと、なめないでよね」が口ぐせの、史上“最弱”の刑事・甘糟が大ピンチ!?北綾瀬署管内で起きたチンピラ殺人事件の捜査線上に浮かんだ謎多き人物。捜査本部でただひとりその正体を知る甘糟は、現場にふらりと現れる男に翻弄されることにー。笑って泣ける痛快“マル暴”シリーズ待望の第2弾。“任侠”シリーズ阿岐本組の面々も登場!(「BOOK」データベースより)
郡原先輩の指示でチンピラの喧嘩の現場に行くと、白いスーツの男がこの喧嘩は仲裁のために自分が買うと言い始めた。
仕方なく甘糟が乗り出すと、面子のみで張り合っていたチンピラらはどこかに消えてしまう。
しかし、その後、そのチンピラの一人が殺されてしまい、容疑者の一人として捜査線上に浮かんだのが、白いスーツの男だった。
『マル暴総監』の感想
本『マル暴総監』は、『マル暴シリーズ』の第二作目となる長編の警察小説です。
本書『マル暴総監』は、著者今野敏の人気シリーズの一つ『任侠シリーズ』から派生したユーモアミステリーの『マル暴シリーズ』の第二弾作品です。
ですから、本書には『任侠シリーズ』の阿岐本組代貸である日村誠司なども少しだけですが登場します。
このシリーズは、甘糟達夫というマル暴らしからぬ主人公のキャラクターや、甘糟の相棒である郡原虎蔵というマル暴らしい刑事の存在が実に面白く描いてあります。
本書『マル暴総監』では、それに加えマル暴総監と呼ばれる栄田光弘警視総監まで加わり、物語展開を一段と荒唐無稽なものとしています。
この警視総監は巷でチンピラ達を懲らしめては暴れん坊将軍を気取り、一人悦に入っているという困ったキャラクターです。
この警視総監が、マル暴である甘糟が特別に参加している捜査本部に頻繁に顔を見せ、白いスーツの男の正体を知っている甘糟に口止めをし、捜査の指揮を取ろうとするのです。
警視総監と上司との間に入り振り回される甘糟ですが、自らは動かない郡原の言うとおりに動いて捜査の方向性を決めそうな重要情報を掴んでくるのでした。
本書『マル暴総監』は、そもそもミステリーとしての出来栄えを期待する類の小説ではないのでしょう。
代わりに、ある種ファンタジーともいえる痛快ユーモア小説としてその期待に十分に応えてくれると思います。
その中で、郡原の指示に隠された意外な冴えなどの見どころがちらりと見えたりと、単にコミカルさを売り物にしているだけの物語ではない、さすがに今野敏の小説だとあらためて感心することになりました。