高村 薫 雑感
わが国を代表する小説家、言論人。『黄金を抱いて翔べ』で日本推理サスペンス大賞を受賞して作家デビュー。『マークスの山』で直木賞を受賞、以降も数々の文学賞に輝いた。『晴子情歌』『新リア王』『太陽を曳く馬』の長編三部作が注目を集め、殊に『新リア王』は、親鸞賞を受賞するなど、仏教界に衝撃を与えた。『神の火』『レディ・ジョーカー』『李歐』『冷血』など、著書多数。
(出典 : 高村薫 | 著者プロフィール | 新潮社)
この作家の作品は数多く読んでいるわけではありません。それどころか二冊のみです。その中の一冊『四人組がいた。』はそうでもないのですが、直木賞を受賞した『マークスの山』には驚きました。重厚な文章と緻密な書き込み、という表現がそのまま当てはまる作品でした。そして、どの作品も基本的に「重厚」という評価が当てはまる作家さんのようです。
昔から機械が好きだったこともあって、最初はパソコンを使っている感じが心地よかった。毎夜、書いては消しを繰り返した。ある日、自分の好きな情景を書いていくうちに、ある人間の姿が浮かんだ。車をじっと見ている。なぜ見ているのか。爆破するために見ていたのだ。ストーリーが浮かんできた。書き続けた。こうして処女作「リヴィエラを撃て」が誕生した。
(出典 : 日刊スポーツ インタビュー<日曜日のヒロイン> より )
上記は高村薫本人の言葉です。このあと『黄金を抱いて翔べ』『神の火』などを経て『マークスの山』で直木賞を受賞されます。
その後、数多くの作品を発表されていますが、少し調べてみるとどんどん文学性の高い方向へと向かっているように感じます。『晴子情歌』から『新リア王』『太陽を曳く馬』へと続く物語などは特に「難解」という言葉が目に付きます。
とにかく『マークスの山』の衝撃が強く、なかなか次の作品に手が出ないのが本音ですね。それほどにこの高村薫という作家の作品は、気軽に読み始めることができないのです。読めば面白いのは分かっていても、私にとっては「読む」という態勢を作っていなければ手に取れない作家さんです。
ちなみに、高村薫という作家さんは文庫化の時や出版社が変わったりすると、物語の内容を大幅に修正したり加筆したりと、かなり手を入れることで有名な作家さんのようです。読むときは新刊書を読むか文庫版を読むかで印象も異なる、などと書いてあったりもします。ご注意を。