紹介作品

イラスト1
Pocket

高村 薫 雑感

わが国を代表する小説家、言論人。『黄金を抱いて翔べ』で日本推理サスペンス大賞を受賞して作家デビュー。『マークスの山』で直木賞を受賞、以降も数々の文学賞に輝いた。『晴子情歌』『新リア王』『太陽を曳く馬』の長編三部作が注目を集め、殊に『新リア王』は、親鸞賞を受賞するなど、仏教界に衝撃を与えた。『神の火』『レディ・ジョーカー』『李歐』『冷血』など、著書多数。
(出典 : 高村薫 | 著者プロフィール | 新潮社)

この作家の作品は数多く読んでいるわけではありません。それどころか二冊のみです。その中の一冊『四人組がいた。』はそうでもないのですが、直木賞を受賞した『マークスの山』には驚きました。重厚な文章と緻密な書き込み、という表現がそのまま当てはまる作品でした。そして、どの作品も基本的に「重厚」という評価が当てはまる作家さんのようです。

昔から機械が好きだったこともあって、最初はパソコンを使っている感じが心地よかった。毎夜、書いては消しを繰り返した。ある日、自分の好きな情景を書いていくうちに、ある人間の姿が浮かんだ。車をじっと見ている。なぜ見ているのか。爆破するために見ていたのだ。ストーリーが浮かんできた。書き続けた。こうして処女作「リヴィエラを撃て」が誕生した。
(出典 : 日刊スポーツ インタビュー<日曜日のヒロイン> より )

上記は高村薫本人の言葉です。このあと『黄金を抱いて翔べ』『神の火』などを経て『マークスの山』で直木賞を受賞されます。

その後、数多くの作品を発表されていますが、少し調べてみるとどんどん文学性の高い方向へと向かっているように感じます。『晴子情歌』から『新リア王』『太陽を曳く馬』へと続く物語などは特に「難解」という言葉が目に付きます。

とにかく『マークスの山』の衝撃が強く、なかなか次の作品に手が出ないのが本音ですね。それほどにこの高村薫という作家の作品は、気軽に読み始めることができないのです。読めば面白いのは分かっていても、私にとっては「読む」という態勢を作っていなければ手に取れない作家さんです。

ちなみに、高村薫という作家さんは文庫化の時や出版社が変わったりすると、物語の内容を大幅に修正したり加筆したりと、かなり手を入れることで有名な作家さんのようです。読むときは新刊書を読むか文庫版を読むかで印象も異なる、などと書いてあったりもします。ご注意を。

[投稿日] 2016年10月18日  [最終更新日] 2016年10月18日
Pocket

おすすめの小説

読み応えのある物語を書かれる、おすすめのサスペンス・ミステリー作家

綿密に書きこまれた小説です。決して軽く読み飛ばすことはできませんが、読後は十分な満足感を得られる作品群です。
横山 秀夫
どの作品も、従来の警察小説とは視点を異にしています。NHKでドラマ化もされた「64(ロクヨン)」にしても主人公は広報官です。また検視官や新聞記者など多彩です。勿論普通に捜査官が主人公になっている作品もあります。どの作品もよく練り上げられている感じが、読んでいて物語の厚みとなって感じられます。
佐々木 譲
作品のジャンルは多岐にわたるようですが、とくに警察ものが人気が高い作家さんのようです。「警官の血」などは、親子三代にわたり警察官となった男達の人生を描く大河小説で、2007年の日本冒険小説協会大賞を受賞しており、直木賞のノミネート作でもあります。他に「笑う警官」を始めとする『道警シリーズ』も人気があります。
堂場 瞬一
胸を熱くするスポーツ小説の名手でもあるこの作家は、またハードボイルドタッチの作品も書かれています。孤高の刑事鳴沢了の活躍を描く「刑事・鳴沢了シリーズ」は圧巻です。
乃南 アサ
直木賞を受賞した「凍える牙」は「女刑事・音道貴子シリーズ」の一冊で、重厚な作品で、十分な読み応えがあり、この人の代表作と言えるでしょう。
黒川 博行
建設コンサルタント業の二宮と暴力団幹部・桑原の「疫病神コンビ」が活躍する「疫病神シリーズ」や、「悪果」などの悪徳刑事コンビの「堀内・伊達シリーズ」など、はまったら抜けられません。

関連リンク

インタビュー<日曜日のヒロイン>
きっかけは、ボーナスでパソコンを買ったことだった。小説家高村薫さん(51)。OL時代、帰宅後の暇つぶしに始めた小説書き。ち密な構成力や克明な情景描写、骨太な筆致、社会への冷徹な視点、そして普遍性がプロをもうならせ、デビューからわずか3年で直木賞を受賞していた。
高村薫さん「みんな ひとりに慣れないと」 : 地域 : 読売新聞
未婚、単身世帯が増え「ひとり」化する社会。自らも独身の作家高村薫さん(62)に尋ねてみた。どんな未来が来ますか。
高村 薫 - インタビュー内容|今を輝く同窓生たちのインタビュー
今を輝く同窓生でユニークな仕事に就いた人の、考え方や、きっかけ、生き方、そして、夢を、皆様にお届けします。
1407夜『新リア王』高村薫|松岡正剛の千夜千冊
ぼくは必ずしも高村薫の良い読者ではない。ちゃんと読んではいない。それでも『マークスの山』と『レディ・ジョーカー』で、山崎豊子を追う新たな本格派社会推理小説の女性作家が登場したと思えた。
『冷血(上・下)』 (高村薫 著) | 著者は語る - 文藝春秋WEB
カポーティ版と同じく高村版『冷血』でも、犯罪に手を染めるのはどこにでもいそうな二人の男。携帯電話の求人サイトで知り合った井上克美と戸田吉生だ。
【書評】空海 高村薫著|from dot.|ダイヤモンド・オンライン
高村薫の『空海』は、たんなる1200年記念企画ではない。彼はどういう人だったのか、何を見て何を感じたのか。それを考えながら小説家は、空海の足跡を辿っていく。