『獣眼』とは
本書『獣眼』は『ボディガードキリシリーズ』の第一弾作品で、2012年10月に徳間書店からハードカバーで刊行され、2015年7月に間文庫から665頁の文庫として出版された長編の冒険小説です。
大沢作品としては普通に面白い作品でした。
『獣眼』の簡単なあらすじ
素性不明の腕利きボディガード・キリのもとに仕事の依頼が舞い込んだ。対象は森野さやかという十七歳の少女。ミッションは、昼夜を問わず一週間、彼女を完全警護すること。さやかには人の過去を見抜き、未来を予知する特別な能力が開花する可能性があるという。「神眼」と呼ばれるその驚異的な能力の継承者は、何者かに命を狙われていた。そしてさやかの父・河田俊也が銃殺されたー。(「BOOK」データベースより)
『獣眼』の感想
本書『獣眼』は、大沢在昌らしいアクションハードボイルド小説です。
本名も年齢も分からない一匹狼のボディーガード“キリ”を主人公とした作品で、それなりに、しかし大沢作品としては普通の面白さを持った作品として読みました。
ボディーガードのキリの今回の保護の対象者は、森野さやかという十七歳の少女であり、「神眼」が開花までの一週間のはずの仕事でした。
さやかの父親の河田俊也父親は現在の「神眼」の持ち主であり、未来を見通してキリに依頼してきたらしいのですが、保護対象のさやかは、父とは別に母親と二人で暮らしている奔放な娘でした。
序盤は個性的な主人公のキャラクターもあり、あの『新宿鮫シリーズ』にも劣らない面白い小説が出てきたと楽しみに読み進めました。
しかし、父親の河田が主宰する「至高研究会」という集団と、至高会と対立する組織である「ツブシ」と呼ばれる集団の存在が明らかにされ、さやかが正体不明の敵から実際に襲われる中盤あたりから、どうも雲行きが怪しくなっていきます。
つまり、主人公の個性がどこかにいってしまい、普通のアクション小説になってしまうのです。
勿論、普通のアクション小説ではあっても大沢在昌が描く物語ですから、それなりに面白い物語であることには間違いありません。でも、大沢在昌の物語にはどうしてもそれ以上のものを期待してしまうのです。
ちなみに、ボディーガードを主人公とした物語と言えば、ボディガード・キリ シリーズに書いたように、今野敏の『ボディーガード工藤兵悟』シリーズや、渡辺容子の「八木薔子シリーズ」を思い出します。
もちろん他にもかかれているでしょうが、現在直ぐに思い出す作品としては上記作品にとどまるようです。