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梅原 克文 雑感

もう10年以上も前のことですが、久しぶりに「法螺話の面白さ」を持った作家に出会った、という印象を持ったことを覚えています。

その「法螺話の面白さ」とは、驚きという点ではひと昔前のSFで言われていた「センス・オブ・ワンダー」という言葉にも似ていると思うのですが、若干異なるものと考えています。

「センス・オブ・ワンダー」とは、誤解を恐れずに言えば「新鮮な驚き」とでも言うべきもので、単なる驚きを越えたその基礎に科学的な根拠がある「驚異」のことを言い、一方「法螺話」は、既存(既知)の事実の積み重ねの中に嘘を紛れ込ませて、如何にもホントらしい話を組み立てることを言う、と思っています。その根拠を真実らしく見せているだけで全くの嘘なのです。

この梅原克文という作家の「二重螺旋の悪魔 」「ソリトンの悪魔 」という初期の2作はこの嘘の上に積み上げられた物語の面白さが群を抜いていると感じたのです。

残念ながら、その後に続く先品はどんどん法螺話の展開が無くなり、物語としての面白さが無くなっていきました。勿論これは私の感想なので、私の感覚と合わなくなっただけのことでしょう。しかし、それこそが私にとって問題なのです。

でも、とにかくこの2作品は絶対のお勧めです。

ちなみに、この作家の作品をSF小説と言ってはいけないそうで、サイファイ小説を言うべきだとか。まぁ、呼称はどうでもいいですけどね。

[投稿日] 2015年04月07日  [最終更新日] 2015年4月7日
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