池井戸 潤

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文藝春秋

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東京中央銀行に入行した半沢直樹を主人公とする、長編の痛快経済小説です。

 

「半沢直樹」といえば、TBS『日曜劇場』で放映されたテレビドラマが最高視聴率が四十%を超えるという爆発的なヒットを見せたことで知られています。

 

 

その後、池井戸潤の原作をもとに、半沢直樹同様に銀行を舞台にした『花咲舞シリーズ』や、下町の中小企業の物語である『下町ロケットシリーズ』、陸上競技のシューズメーカーを舞台にした『陸王』など次々とドラマ化されています。

 

 

 

なお、『花咲舞シリーズ』は、時系列的には『半沢直樹シリーズ』の少し前の物語であり、『花咲舞シリーズ』の中に合併前の旧産業中央銀行時代の半沢直樹が登場している作品もあるそうです。

 

 

オレたちバブル入行組』での半沢直樹は産業中央銀行へ入行しますが、産業中央銀行は東京第一銀行と合併して東京中央銀行となり、今は東京中央銀行の大阪西支店の融資課課長となっています。そこで、上司から不良貸付の責任を負わされる羽目に陥り、反撃を開始するのです。

ここでの産業中央銀行と東京第一銀行との系列が、現在の東京中央銀行でも旧S系と旧T系としての対立していて、この後も何かと起きる事件の遠因となっています。

 

オレたち花のバブル組』での半沢直樹は、東京中央銀行本部の営業第二部次長となっており、老舗ホテル「伊勢島ホテル」の再建という難題に取り組むことになります。

 

その後、『ロスジェネの逆襲』での半沢直樹は、前巻で難題を乗り切ったものの上層部の反感を買い、東京中央銀行の証券子会社である東京セントラル証券へと出向させられ、営業企画部長という地位にあり、持ち込まれた企業買収の問題処理にあたることになります。

そして、最終巻『銀翼のイカロス』では民間の航空会社の再建問題に取り組むことになります。具体的には新政権下での新大臣の設けたタスクフォースによる理不尽な債権放棄要請の処理です。

半沢直樹もとうとう政府を相手に喧嘩をすることになります。権力者相手に力を尽くしてきた半沢の究極の喧嘩相手が登場、というところでしょう。

繰り返し書いてきたことではありますが。この「半沢直樹シリーズ」の面白さは、理不尽な権力者を相手に一歩も引かずに正論をぶつけ、半沢が信じる正義を貫くその爽快さ、痛快さにあります。

そういう点でも『銀翼のイカロス』の相手は、最大の敵役ということができ、さらには国民のほとんどが知っている明確なモデルを意識しつつ読み進めることができる、という意味でも感情移入しやすいテーマです。

 

以上のような構成の『半沢直樹シリーズ』ですが、痛快小説の常として、ストーリーが主人公の都合のいいように展開するという傾向が無いこともありません。

しかし、そうした瑕瑾はありながらも、現実社会ではまずは通用しない主張が堂々とまかり通り、勧善懲悪の物語を貫徹するその姿は、作者の文章の表現、物語構成のうまさにより、読者にこの上ないカタルシスをもたらしてくれます。

 

ところで、半沢直樹同様の熱血銀行マンが主人公の「集団左遷」というドラマを見ましたが、あまりにも現実と乖離したその内容は、過剰な演出とも相まって、本シリーズとは異なってとてもプロの銀行マンの行いとは思えず、少なくともテレビドラマは残念な物語でした。

 

半沢直樹シリーズは冒頭にあげた四巻以降は書かれることはないかもしれませんが、できることならば続編を読みたいものです。

[投稿日]2019年05月10日  [最終更新日]2019年5月10日
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