池井戸 潤

半沢直樹シリーズ

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本書『アルルカンと道化師』は、半沢直樹シリーズの第五作目の長編の経済小説です。

さすが『半沢直樹シリーズ』の最新作だけあって、半沢直樹の倍返しは痛快で小気味のよく、面白さ満載の作品でした。

 

東京中央銀行大阪西支店の融資課長・半沢直樹のもとに、とある案件が持ち込まれる。大手IT企業ジャッカルが、業績低迷中の美術系出版舎・仙波工藝社を買収したいというのだ。大阪営業本部による強引な買収工作に抵抗する半沢だったが、やがて背後にひそむ秘密の存在に気づく。有名な絵に隠された「謎」を解いたとき、半沢がたどりついた驚愕の真実とは―。(「BOOK」データベースより)

 

本書『アルルカンと道化師』は、半沢が東京中央銀行大阪西支店へ赴任して間もない頃に起こったM&Aの顛末を描いた作品であり、シリーズ第一作の『オレたちバブル入行組』より前の半沢直樹の姿が描かれています。

半沢直樹シリーズ』では、銀行融資とその回収、そして老舗ホテルの再建、企業買収、航空会社の再建がそれぞれの物語のテーマとされてきました。

そしてシリーズ最新刊の本書『アルルカンと道化師』では、再び強引に進められる企業買収、そしてその裏に隠された秘密に迫る若き半沢直樹の姿が描かれています。

ここで「企業買収」の意味について下記のサイトが詳しく説明してありました。関心のある方はご覧ください。
 

 

今回の企業買収の特徴は、買収の対象企業が絵画を扱う会社だということです。

本書のタイトルの『アルルカンと道化師』とは本書内で登場する架空の絵画の名前であり、この絵画が物語のカギとなってきます。

ちなみに、この『アルルカンと道化師』とは、実在するアンドレ・ドランという人が書いた『アルルカンとピエロ』という作品からヒントを得、本書の中で使うようになったと書いてありました(【「半沢直樹」シリーズ最新刊、作家・池井戸潤氏インタビュー】 : 参照)

 

共に“道化師”という同じ意味のようにも思える「アルルカン」と「ピエロ」という言葉ですが、「アルルカン」は詐欺師的で悪賢く、「ピエロ」は純真でちょっと抜けている存在だそうです。

この違いが本書のクライマックスで大きな意味を持ってくるのですが、そこには人間の深い哀しみが隠されていたのです。

 

それは、本書のクライマックスの楽しみとして、本書の面白さの要因の一つにミステリー仕立てということが挙げられます。

もともと池井戸潤という作家さんがミステリー出身の人というだけあり、この『半沢直樹シリーズ』も含め、作品の多くがミステリータッチで描かれています。

主人公の前に様々なかたちで立ちふさがる壁、その壁は何を意味しており、その壁に隠された秘密は何なのか、が壁を乗り越えるカギになっていることが多く、主人公はその謎を解くことで困難な状況を打破していきます。

本書でも、「アルルカンと道化師」という絵に隠された秘密を見つけることで仕掛けられたM&Aを乗り切り、半沢の倍返しのきっかけともなるのです。

 

池井戸作品でよく言われることは、痛快小説としてご都合主義だという指摘です。

確かにその指摘は当たっていると思います。『本シリーズ』でも危機的状況を脱する期限ぎりぎりに都合よく新しい事実が出てきて反撃に移ることができる場面がよく見られます。

しかし、そうしたご都合主義的な状況も、半沢のあきらめない気持ち、常にお客様のためという基本的な心得などがあって初めてもたらされるものとして描かれていて、ストーリの進行上あまり気になりません。

それどころか、銀行の存続理由をお客のためという一点に求める半沢の立ち位置こそがそうした都合のいいストーリーの流れをもたらすと感じてしまうのです。

 

また半沢の友人の渡真利が都合よく社内の情報を教えてくれることも半沢の大きな武器となっています。

その他にも半沢のためにという人材が多数いるのです。

こうした半沢の人間性ゆえに応援団が増え、そのことでさらに半沢の情報網が増えていくことも読者にとて心地よさをもたらしてくれていると思います。

今後もこのシリーズは続くだろうと作者もおっしゃっています。

楽しみに待ちたいと思います。

[投稿日]2020年11月10日  [最終更新日]2020年11月10日
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