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夢枕 獏 雑感

30年以上前に、今は「朝日文庫」その他のレーベルになっているらしい、ジュブナイルと分類される「ソノラマ文庫」という文庫がありました。この文庫で菊地秀行の「魔界都市〈新宿〉」や高千穂遙の「クラッシャージョウ」などを見つけたものです。

後に「キマイラ・吼」シリーズとなる「幻獣少年キマイラ」を、天野喜孝氏(だったと思う)のイラストが印象的で購入したと覚えています。変身もののこの本は格闘技小説の片鱗も見え、SF、ファンタジーいずれともつかない変な魅力がありました。

その後この作家はエロスとバイオレンスの世界で花開くことになりますが、「闇狩り師」にしても「サイコダイバー」にしても、人の精神世界を描くという点では一致していると思います。

その精神世界の描写のひとつの到達点として「陰陽師」シリーズがあり、「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」があるのではないでしょうか。共に怪異譚を描くのですが、その本質は人間の精神を言っているようです。この作家の各作品を通して語られるのはそうした人間の心の哀しさであるような気がします。

その文体は会話文が多く、短めのセンテンスをたたみ掛けてくるので、テンポよく読み進めることができます。漫画チックという言い方もできるかもしれませんが、それがまた私のような読者にはたまりません。軽く読めて、お勧めです。

ただ、この作家のシリーズものはどれも長い。20年を経てもなお終わっていないシリーズが何本もあります。

彼の書いたバイオレンスは格闘技小説というジャンルを切り開いたと言っても良いのではないでしょうか。

他方「神々の山嶺」のような山岳小説、更には釣りをテーマにした作品まで著しています。

以下のおすすめの作品は参考にすぎません。他にも面白い作品がたくさんあります。

お勧めの作家のひとりです。

[投稿日] 2015年03月23日  [最終更新日] 2015年4月22日

おすすめの小説

おすすめの山岳小説小説作家

新田 次郎
孤高の人」や栄光の岩壁銀嶺の人の山岳小説三部作と呼ばれる作品を始め、多数の著作があります。山岳小説と言えばまずはこの人でしょう。
夢枕 獏
実在の人物をモデルにした主人公羽生丈二のエベレスト冬季単独登攀を描いた神々の山嶺は圧巻です。
井上 靖
切れるはずのないナイロンザイルが切れた・・・。山岳小説家と言っていいのか疑問はありますが、「氷壁」は、ドラマ化、映画化もされた名作です。
森村 誠一
密閉山脈」等の一連の作品は、単に山を舞台にした推理小説以上の迫力を有しています。
ボブ・ラングレー
あの冒険小説の名手ヒギンズに「比類なき傑作」と言わせたのは、超一級の山岳冒険小説である「北壁の死闘」です。

おすすめの伝奇小説作家

伝奇小説を書かれる作家の一部のみを挙げています。
菊地 秀行
夢枕獏と同じ頃に登場し、「魔界行シリーズ」で人気を博し、現在もベストセラーを出し続けています。
荒俣 宏
北一輝などの実在の人物が絡み、風水の力を扱う物語の「帝都物語」は、一大ブームを巻き起こし、映画化もされました。
栗本 薫
魔界水滸伝」は、ラヴクラフトのクトゥルー神話と日本古来の神々との戦いが描かれた作品です。これは面白い。
半村 良
妖星伝」や「石の血脈」、「産霊山秘録」など、日本の伝奇小説の第一人者です。
谷恒生
闇の勢力との戦いを描いた「魍魎伝説」で一躍伝奇バイオレンス小説の旗手になりました。
高橋克彦
超能力者霧神顕の活躍を描く「総門谷」は、作者の膨大な知識を余すところなく示している、一大伝奇小説シリーズです。

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