『ニンジャ 公安外事・倉島警部補』とは
本書『ニンジャ 公安外事・倉島警部補』は『倉島警部補シリーズ』の第八弾で、2025年5月に文藝春秋から240頁のハードカバーで刊行された、八編の短編からなる公安警察小説集です。
公安小説でありながらも今野作品らしくとても軽くて読みやすく、それでいてそれなりの読みごたえを感じることが出来た作品集でした。
『ニンジャ 公安外事・倉島警部補』の簡単なあらすじ
日本の公安にはニンジャがいる。公安のエース倉島。次期エース候補西本。元刑事のベテラン白崎。注意深き公機捜隊員片桐。気配を消せる若手伊藤。倉島警部補がチームで挑む8つの事件簿。これが、諜報の世界。ロシア人スパイ、美しき台湾公安捜査官、謎のテロリスト…(「BOOK」データベースより)
「アテンド」
美貌を誇る台湾の公安捜査官・林春美(リン・チュンメイ)が来日するとの報せが。彼女に惚れ込む西本はアテンドに手を挙げるが、彼女相手にそう簡単に事は進まずーー?
「ケースオフィサー」
最近赴任したばかりのロシア大使館駐在武官・ゴーゴリの行確(行動確認)を指示された倉島。張り込みを続けると、彼はある日本人女性と接触していてーー?
「ニンジャ」
「洗いたいロシア人がいる」白崎の提案からチームを編成、公安総務課の伊藤と公安機動捜査隊の片桐を借り出すことに。対象はあるパーティーに参加するようだがいかに潜入すべきか。そのとき〈ニンジャ〉が動き出す。
「ペルソナ・ノン・グラータ」
例の件でゴーゴリがご立腹だと情報提供者・コソラポフから聞いた倉島は、逆転の発想で奇策を仕掛けーー?
「アベンジャーズ」
“ゼロ”の校長、通称「裏の理事官」にばったり出くわした西本。なんでもランチのお誘いで「信頼できる先輩」も連れてこいということらしく倉島と二人で向かうとそこにはーー?
「ノビチョク」
練馬の変死体事件の捜査になぜか呼び出された倉島。「おまえさん、刑事がみんな公安を毛嫌いしていると思ってないか?」刑事畑出身の同僚・白崎の言葉にはどんな意味が?
「テロリスト」
公機捜の後輩・片桐が密行中に気になったもの。それはホームセンターの前で見かけた男のリュックから覗き見えた白いポリ容器で……
「スピンドクター」
今度はアジア担当の外事二課・竹岡が林春美をスピンドクター(情報操作者)ではないかと疑いだし、再びの行確を行うがまたしても彼女のほうが一枚うわてでーー?
内容紹介(出版社より)
『ニンジャ 公安外事・倉島警部補』について
本書『ニンジャ 公安外事・倉島警部補』は『倉島警部補シリーズ』の第八弾となる、短編の公安警察小説集です。
どちらかというと重めの内容であることが多い公安警察作品ですが、まさに今野敏の作品であってとても読みやすく、そしてそれなりの読みごたえを感じた作品集でした。
『ニンジャ 公安外事・倉島警部補』の登場人物
本書の主役はこのシリーズの主役である倉島達夫です。そしてこの倉島が活動するときのチームとして、元ベテラン刑事で何かと頼りになる白崎敬やゼロの研修を終えていて次のエース候補でもある西本芳彦がいます。
そのほかにも、公安総務課公安管理係所属で倉島が公安としての適性を認めている伊藤次郎や公安機動捜査隊所属の片桐秀一らが助けてくれ、チームに機動力を与えてくれています。
また、伊藤を借り出すときにいつもネックになるのが公安総務課公安管理係長であり物語に一味を加えています。また、倉島の「作業」時の上司でもある公安総務課長の佐久良忍も独特の雰囲気を持った存在です。
加えて、本書では前作の『台北アセット』から登場して物語に色を添えているのが、ニッポンLC台湾法人の技術部社員であり、且つ台湾警政署保安組所属捜査官でもある林春美(リン・チュンメイ)がいます。
『ニンジャ 公安外事・倉島警部補』の感想
本書『ニンジャ 公安外事・倉島警部補』は、公安小説でありながらも今野作品らしくとても軽くて読みやすく、それでいてそれなりの読みごたえを感じることが出来た作品集でした。
ただ、このシリーズは相変わらずに公安警察の活動の様子を描いているけれど、『倉島警部補シリーズ』の項でも書いているように、通常の警察小説との差異があまり感じられません。
『ZERO』(幻冬舎文庫 全三巻)の麻生幾や、『警視庁情報官シリーズ』の濱嘉之といったリアルなインテリジェンス作品とくらべると、公安警察も通常の警察小説の延長線上に存在する印象が強く感じられるのです
とはいっても、本書『ニンジャ 公安外事・倉島警部補』については上記の「簡単なあらすじ」の「内容紹介」に転記しているように、外国を対象とする具体的な諜報戦の実態が描かれるというよりも、公安職員の日常を紹介しているという側面が強くなっています。
その意味で、行確(行動確認)という公安の日常の業務を通しての作業が描かれているのであり、対人諜報活動であるフーミントの実際が描かているのです。
そうした意味で、本書はこれまでの本シリーズの初期作品を除けば公安色が強く出ているとは感じた作品でした。