濱 嘉之 雑感
『濱嘉之』のプロフィール
1957年、福岡県生まれ。中央大学法学部法律学科卒業後、警視庁入庁。警備部警備第一課、公安部公安総務課、警察庁警備局警備企画課、内閣官房内閣情報調査室、再び公安部公安総務課を経て、生活安全部少年事件課に勤務。警視総監賞、警察庁警備局長賞など受賞多数。2004年、警視庁警視で辞職。2007年『警視庁情報官』(講談社刊)で作家デビュー。他に同名シリーズ『公安特命捜査 警視庁情報官II』がある。危機管理コンサルティング会社代表なども務めるかたわら、TV、紙誌などでコメンテーターとしても活動している。引用元:濱嘉之 | 著者プロフィール | 新潮社
『濱嘉之』について
経歴を見ても分かるように、現実に公安警察に勤務されていたという経歴を持っておられ、書かれてい公安警察小説のリアリティーは他の追随を許しません。
普通の警察小説のように、殺人などの事件がおき、その犯人を捜し出すというパターンの小説ではありません。国家の存立のための諜報を第一義とするという組織の存在理由からも、通常の警察とはその職務を異にしている公安警察の現実の姿を描いているそうです。
ジョブチューンというテレビ番組があり、その中の警察特集で、江藤史朗という公安出身の方が公安警察の実際を語っておられました。この江藤史朗氏こそが濱嘉之氏だということは、後になって知りました。
公安警察の実際をリアルに描いている作家さんとしては、麻生幾の名を挙げないわけにはいきません。『ZERO』という作品に代表されるこの作者の作品群は、その取材力を背景にした膨大な情報を緻密に描きこんだリアルな舞台設定のもと、一級の冒険小説として仕上がっているのです。
抜群の取材力を前提としたスケールの大きな作品を描き出すという点では、第14回日本冒険小説協会大賞を受賞した『蝦夷地別件』などを著している船戸与一の作品群に似ているといえるかもしれません。しかし、麻生幾の場合は、国際謀略小説として情報量は一級でも、小説としての読みやすさでは若干読みにくいのです。
公安警察の世界を描く作家としては、ほかに竹内明という人がいます。TBSテレビの報道局記者として「オウム真理教事件」などの大事件を取材してきた人だそうで、この人の書く『背乗り ハイノリ ソトニ 警視庁公安部外事二課』などの作品も、そのリアリティにおいては同質のものがあります。
他には、警察小説のベストセラー作家の一人である、今野敏も、めずらしく公安警察員を主人公にした作品を書いておられます。『倉島警部補シリーズ』がそれで、シリーズ当初は冒険小説的色合いもありましたが、近年の作品は公安の職務に沿った内容の作品になっていると思います。